韓国社会の動揺が収まらない。朴槿恵(パク・クネ)大統領が、涙を流しながら旅客船「セウォル号」沈没事故に関する国民向け談話を発表したが、不明者家族や犠牲者遺族などの反発が止まらず、社会全体が意気消沈しているのだ。こうしたなか、韓国経済を支える大手財閥でも「不安の連鎖」が拡大しているという。ジャーナリストの室谷克実氏が迫った。
悪い時には、悪いことが重なるものだ。
セウォル号沈没事故で、改めて照射された韓国社会の「日常的腐敗」、それを材料に、朴政権を揺さぶろうとする韓国左翼勢力の「棺(ひつぎ)デモ」感覚の跋扈(ばっこ)。もう、それだけで韓国の新聞は紙面がいっぱいになるだろうに、経済の中の「好調部門」を形成していた大手財閥の不安材料が次々と浮上してきた。
最大のそれは、今年1月22日付の連載「新・悪韓論」で、「スマホ不調で陰りの見えるサムスン もう1つの不安要素が…」で書いておいた、サムスン財閥の憂鬱が、とうとう現実になったことだ。
絶対の総帥である李健煕(イ・ゴンヒ)氏がついに倒れたのだ。「低温治療」「意識戻らず」と伝えられる。もはや彼が号令をかけることはないと見るべきだろう。
彼が健在な時代にも、決して一枚岩ではなかった。株式相続の問題は当面、発生しないだろうから、ゆっくりと3代目の李在鎔(イ・ジェヨン)体制に移行していくだろうが、その過程で3代目の寵愛を得ようと番頭たちが暗闘を繰り広げるだろう。北朝鮮の権力構造によく似ているのだ。