先月17日から19日、中国の習近平国家主席はインドを訪問した。国際社会でも注目される訪問だったが、中国国内ではなおさら、異様な興奮ぶりで盛り上がっていた。訪問開始の翌日に人民日報は1面から3面までを関連記事で埋め尽くし、訪問後、政府は国内の専門家やマスコミを総動員して「偉大なる外交的成功」を絶賛するキャンペーンを展開した。中国政府と習主席自身にとって、それが大変重要な外交イベントであったことがよく分かる。
しかし、この内外注目の外交舞台に立った習主席に冷や水を浴びせたような不穏な動きが中国国内で起きた。フランスのAFP通信が9月18日に配信した記事によると、習主席がインド入りした当日の17日、中国との国境に接するインド北西部ラダック地方で、約1千人の中国軍部隊が突如インド側に越境してきて、それから数日間、中国軍とインド軍とのにらみ合いが続いたという。
中国軍の行動は当然、インド側の怒りと強い不信感を買った。18日に行われた習主席との共同記者会見で、インドのモディ首相が厳しい表情で「国境地域で起きていることに懸念を表明する」とメモを読み上げたとき、習氏の表情はいきなり硬くなった。
それは、習主席のインド訪問が危うく壊される寸前の際どい場面であったが、中国軍がこの「重要訪問」をぶち壊そうとするような行動に出たのは一体なぜなのか。
実は同じ9月の19日、中国軍高官の口から、習主席と中央指導部の権威をないがしろにするような発言が別の場所でなされた。
アメリカ海軍大学校で開催中の国際シンポジウムに参加した中国海軍司令官の呉勝利司令官が香港フェニックステレビのインタビューに応じ、米中関係のあり方について「米中間では原則面での意見の相違があり、その解消はまず不可能だ」と語った。それは明らかに、習主席や中央指導部の示す対米関係の認識とは大きく異なっている。