朴槿恵大統領はなぜ、29日に事実上の「辞意表明」をしたのか。野党は30日にも朴氏への弾劾訴追案を発議する姿勢をみせ、与党の主流派からも退陣を求める声が上がっていた。朴氏が主導権を発揮しうる「最後の一日」だったといえる。
「100回でも謝罪を申し上げることが当然の道理だと考えています」
3度目となる29日の国民向け談話は世論の予想を裏切るものだった。軽く一礼し、無表情のままマイクの前で語り始めた朴氏が「大統領職の任期短縮を含む進退問題を国会の決定に委ねる」と口にしたからだ。
「弾劾になっても政権にしがみつく」。これが大方の世論の見方だった。
朴氏を「辞意」に追い詰めた最大の力は「民心」だった。退陣を求める大規模集会は毎週末に行われ、26日には全国で主催者側が190万人、警察が32万人と推計する国民が参加。大統領府は「大統領は厳粛に受け止めている」とし、朴氏も談話で「夜通し悩み続けた」と述べた。
だが、デモ参加者の多くはベビーカーを押す親子連れや受験を終えた高校生たち。政治運動と無縁だった人々がとっくに朴氏に「ノー」を突き付けていた。
野党は最短で30日の弾劾訴追案の国会発議に向けた準備を進めていた。28日には与党、セヌリ党の主流派からも「名誉ある退陣」を求める声が朴氏に伝えられた。中には朴氏を支えてきた重鎮も含まれていた。