政府の行政刷新会議は19日、17日まで5日間実施した2010年度予算概算要求の「事業仕分け」の中間報告を行ったが、事業仕分けが財務省の思惑通りに進んでいることに、閣僚や民主党重鎮から猛反発する声が噴き出している。実際、財務省は“虎の巻”まで用意するなど、陰で辣腕プロデューサーぶりを発揮するが、そこには「無駄洗い出しの“限界”を示すことで一気に増税路線に導く」(野党関係者)という狙いが潜んでいるという。
「財務省の議論はとんでもない話だ。怒りに震えた」
原口一博総務相は都内の事業仕分け第1ラウンドを視察した際、こう語気を強めた。直接の矛先は、事業仕分けに参加する財務省職員。
「情報通信分野のベンチャー企業支援」など総務省所管の情報通信関連の4事業(計93億円)について、財務省が情報通信技術はもう十分普及していると指摘、事業の必要性が低いとの認識を示したからだ。
怒りが収まらない原口総務相は「間違った認識でとんでもない話」と憤慨したが結局、「目的が不明確」などとの理由で2事業が廃止、残りは見送りと判定された。
その事業仕分けで威力を発揮したのが、財務省が用意した“虎の巻”だった。財務省主計官がまず事業ごとに問題点などを示した「論点シート」を配り、「攻め口」を仕分け人に伝える。いわば「まな板のコイの省庁側を追い込む“虎の巻”」(民主党中堅)。1事業1時間という厳しい制約の中では、どうしても頼らざるを得なくなる。
実際、国土交通省職員が仕分け会場で、「実施する必要性が乏しい」などと財務省の意見が記されている“虎の巻”を発見。露骨な財務省主導に対し、「初めに結論ありきだ」と憤慨する場面もあった。
その一方で、「財務省は身内の仕分けに甘い」(経済官庁幹部)との見方も少なくない。原口総務相が「財務省も聖域ではない」として、財務省所管の独法国立印刷局の利益剰余金のほか、外国為替資金特別会計の積立金、国債費などを仕分け対象に追加するよう、仙谷由人行政刷新担当相に要請したほどだ。
財務省主導との見方に対し、仕分け人の寺田学衆院議員は「判定が財務省と同じこともあるし、独自の視点で違う結論が出たケースもある」と反論する。
しかし、民主党の重鎮である輿石東参院議員会長も19日の記者会見で、事業仕分けに関し「財務省のペースに乗っているとの見方があり、検証しなければならない」と苦言を呈した。
なぜここまで財務省が事業仕分けに協力するのか。
1つは、自民党政権下では族議員を背景にした他省庁による予算要求圧力に対し、「削りたくても倒せない予算があった」(財務省筋)。それだけに、廃止や予算削減判定を公然と連発できる「切れ味鋭い」仕分け作業という“新兵器”は、財務省にとって願ってもないものだからだ。
さらに、野党関係者は「鳩山政権は日本郵政社長ら役員人事で元大蔵や財務省OBを起用した。天下りや渡りとの批判を浴びながらも、民主党と一体となってかばってくれた。その思いから、仕分け作業はほんの恩返しのつもりだろう」と指摘する。
そのうえで、その裏に隠された財務省の野望をこう解説する。
「子ども手当や高速道路無料化など民主党の政権公約を実現するためには、いずれ国債増発や増税に踏み切る必要に迫られる。そのためには仕分け作業で『無駄排除はもう無理、限界だ。絞れるところまでやった』という国民向けのパフォーマンスが不可欠だ。財務省の恩返しは結局増税シナリオの一部にすぎない」
事業仕分けは24日から後半戦の作業に入るが、鳩山首相は先の総選挙中に「税金の無駄遣いをなくせば、8、9兆円はすぐに出てくる」と豪語していたはず。結局、財務省の操り人形となってしまうのか。
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