民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、小沢氏が不起訴処分となる方向が強まった。東京地検特捜部は一両日中に、最高検などと協議して、刑事処分について最終判断を下すが、公判維持が困難との見方が強いのだ。「政界の最大実力者」の金脈をターゲットに着手された前代未聞の大規模捜査。特捜部内には在宅起訴を主張する勢力もあるが、このまま「国内最強の捜査機関」は敗北するのか。
「在宅起訴と不起訴処分では、天国と地獄ほどの違いがある…」
検察関係者はこう歯ぎしりする。
2004年、陸山会が3億4000万円で購入した土地をめぐる事件。
特捜部は、小沢氏の元私設秘書で衆院議員、石川知裕容疑者(36)らの拘置期限である4日まで取り調べを続け、小沢氏の関与の程度を見極めたうえで、最終判断に臨む。石川容疑者らは政治資金収支報告書の虚偽記載を認めており、最大の焦点は、小沢氏を「共犯」に問えるか否かだ。
石川容疑者はこれまでの調べで、小沢氏提供の4億円を04年収支報告書に載せないことや、土地購入の記載を05年収支報告書にずらすことについて、「小沢先生に伝えて、了承を受けた」「先生の了承を得ないで、できるはずがない」と説明。
また、陸山会が土地購入直後に受けた銀行融資についても、「資金の出どころを隠す偽装工作だった」「先生の了承を得た」と供述しているという。
特捜部では、融資の関連書類に小沢氏の署名があるなど、手続きに直接かかわっていたため、先月23日と31日、都内のホテルで数時間におよぶ小沢氏の被疑者聴取を断行。偽装工作の認識について説明を求めた。
しかし、小沢氏は「署名は秘書から頼まれただけ」といい、虚偽記入への関与も「担当者が勝手に行った」などと否定したという。それは、リクルート事件などで、大物政治家らが連発したセリフとそっくりだった。
一連の不可解な偽装工作について、特捜部では中堅ゼネコン「水谷建設」からの5000万円の裏献金を隠すためだったとみて捜査してきたが、石川容疑者らは裏献金については否定し続けているという。
特捜部は、こうした供述や証拠を総合的に検討したうえで、一両日中に、石川容疑者らと小沢氏との共謀関係を、公判で立証することが可能かどうかについて判断する。
前出の検察関係者は「特捜部は、小沢氏本人の立件を視野に捜査を進めてきた。だが、検察内では『石川容疑者の供述を支えに小沢氏を起訴しても、公判で有罪を得るのは難しい』との判断が大勢を占めつつある。現時点で、不起訴処分の方向が強まっている」と語る。
ただ、特捜部内には「4億円もの不記載を秘書が勝手に判断できるはずがない」「水谷建設幹部の裏献金に関する供述は詳細で、同社の内部資料もある」などとして、小沢氏の在宅起訴を主張する声もある。今後の展開次第では、大逆転もあり得る。
実際、小沢氏が不起訴処分となった場合、世論の反発も予想される。
陸山会をめぐっては、10件、約10億円もの不動産を所有していることや、政治資金収支報告書の記載とは異なる、26億円以上の資金移動が報道(読売新聞など)。「小沢金脈」への不信感は高まっている。
特捜部には苦い教訓がある。1992年に発覚した自民党の金丸信元副総裁の5億円ヤミ献金事件で、特捜部は上申書提出だけで略式起訴した。結果、金丸氏は罰金20万円だけ。このことに、国民からすさまじい批判がわき起こり、東京・霞が関の検察庁の看板にペンキまでかけられたのだ。
最新の世論調査では、小沢氏の進退について70%以上が幹事長辞職を求めている。「正義」の旗を掲げる特捜部がどのような最終判断を下すのか。国民はかたずをのんで見守っている。
