まるで北朝鮮!?小沢批判ですぐ解任「言論の自由なし」

2010.03.19


不満分子は“退場”の粛清人事。これも小沢流か。円内は生方幸夫氏(右)と高嶋良充筆頭副幹事長【拡大】

 「北朝鮮と同じだ」。民主党の小沢一郎幹事長に批判的な言動を繰り返したとして、生方幸夫副幹事長を事実上、解任した党執行部に対し、党内から異論が噴出している。生方氏も19日、解任方針に不服申し立てを行う事も検討する考えを明らかにした。「小沢支配」を批判すれば、レッドカードのごとく一発で退場という“粛清”人事。これを契機に、党内でくすぶっていた小沢執行部への不満が爆発し、「小沢降ろし」に火がつく可能性も強まってきた。

 「かなりの多くの議員が党内に自由な雰囲気がないと考えている。正副幹事長会議は役員会で決まったことを報告するだけだ」

 副幹事長職の解任が決まった生方氏は19日、民放番組に相次いで出演。「執行部にいながら党外に向けて執行部批判を繰り返した」とする解任理由に対し、重ねて反論した。

 批判の矛先は、党執行部の解任方針を追認した鳩山由紀夫首相にも向けられた。生方氏は記者団に「もうちょっと熟慮して発言しないと、首相への信頼も揺らぐ」と強調。小沢氏には「自発的に辞めない限り参院選は戦い得ない」と述べ、改めて辞任を求めた。

 解任劇の発端は、17日付の産経新聞のインタビュー。「今の民主党は権限と財源をどなたか1人が握っている」「(首相の)鳩山さんは小沢さんを呼んできちんと注意してほしい」と小沢批判を展開。これが党執行部の逆鱗に触れたのだ。

 生方氏は翌18日、“上司”にあたる高嶋良充筆頭副幹事長は党本部に呼ばれ、副幹事長職を辞任するよう求められたが、「党内には元秘書らが3人も逮捕されても、何もなさらない方もいらっしゃる。なのに、なぜ私が役職を解かれなければいけないのか」などと拒否。

 これに対し、党執行部は「放置できない」として、急きょ副幹事長会議を開催、生方氏が辞任しないなら解任する方針を決めた。高嶋氏から報告を受けた小沢氏は「残念だな。円満に解決できなかったのか」としつつも、最終的には方針を了承した。

 生方氏が党執行部を批判する背景には、政権交代後、党内の政策調査会(政調)を廃止するなど、政策はおろか自由闊達な論議ができなくなっているとの危機感がある。生方氏が、こうした状況に不満を持つ議員有志が集まる「政策調査会の設置を目指す会」の世話人も務めているだけに、「党執行部は党内抗争につながる不満分子を早めに摘み取りたかったのでは」(若手)との見方が少なくない。

 生方氏周辺は「生方氏はもともと、小沢さんと関係は悪くはないが、今回は党内の風通しの悪さに危機感を持ち、政調復活も誰も言えないなら『俺がやらないとな』という親分肌から動いたのだろう」と話す。

 対する高嶋氏は「解任ではない。役職の交代」と強調するが、小沢氏に距離を置く中堅議員は、「小沢氏に近い高嶋氏だけに、、小沢氏の心境を斟酌した結果だろう。もともと自治労出身だから、組織の裏切り者は許さない、ということだ」と指摘する。

 執行部は23日の役員会で、生方氏の後任に、小沢グループ「一新会」に所属し、小沢氏側近の辻恵衆院議員を充てる人事を決める見通しだ。だが、一連の解任劇に「党内を締め付けるための粛清人事だ」「党内の空気は北朝鮮と同じ。言論封殺だ」との声が漏れる。

 一方、小沢氏に距離を置く有力議員「民主七奉行」の反応は、微妙な温度差が浮き彫りになった。

 枝野幸男行政刷新相は19日の記者会見で、「(解任方針は)党や内閣の支持率にプラスに働かないのは間違いない。直ちに辞めるたぐいのことが、どこにあるのか首をかしげる」と解任方針に反発した。七奉行をまとめる渡部恒三元衆院副議長も「とんでもない話だ。民主党がこの国の民主主義を語る資格がなくなった」と執行部を痛烈に批判した。

 これに対し、前原誠司国土交通相は「言論封殺はあってはならないが、組織人として一定のルールもある。モノの言い方も大事だ」と踏み込まず、仙谷由人国家戦略担当相に至っては「事情が分からないのでコメントできない」とダンマリを決め込んでみせた。

 民主党若手議員は「これで内閣も政党支持率もまた下がる。結局、『小沢氏が辞めないと何も変わらない』という声が大勢を占め、『小沢降ろし』が加速するのではないか。ただ、自民党と同じだとみられるのが一番怖い…」と嘆く。

 生方氏の解任劇について鳩山首相は、「党内では黙っていて、外でさまざまな声をあげるということになれば、党内の規律が守れないということになる」と強調し、理解を示した。だが、今回の解任劇が小沢降ろし、さらには党内抗争への導火線になる可能性をはらんでいるのは間違いない。

■高嶋良充(たかしま・よしみつ) 1941年、大阪府生まれ。59年、大阪府立城東工業高校卒業。枚方市職員を経て、自治労書記長など労組の要職を歴任。98年に参院議員に初当選した。現在2期目。労組出身だけに中高年層の雇用環境や失業者対策に力を入れ、公共職業安定所の組織・機能を強化を訴えている。「決して逆らわず、命令を忠実にこなす」(党関係者)のが気に入られたのか小沢幹事長に重用される。「小沢組の若頭補佐」との声も。小沢氏の下で、地方からの陳情に優先順位を付ける仕事を担当する。

■生方幸夫(うぶかた・ゆきお)1947年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部を卒業後、72年に読売新聞社に入社。75年に退社し、フリージャーナリストや経済評論家として約50冊の著作を執筆。その後、新党さきがけの候補者公募に合格し、96年に旧民主党から千葉6区で出馬し比例復活で初当選。現在4期目。

 横路孝弘議長が率いる横路グループに所属し、03年に旧民主党と自由党が合併した際には、横路氏と小沢一郎氏の橋渡し役として奔走したとされる。

 このため、小沢氏とは良好な関係と見られていたが、今月4日、小沢氏の肝いりで政権獲得後に廃止された党政調の復活を求める「政策調査会の設置を目指す会」を結成。小沢支配への反乱とみられていた。

 

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