【激震2010 民主党政権下の日本】97年消費税率引き上げの教訓 タイミング誤れば景気悪化へ 

2010.05.21

 財政当局が増税に必死になっている。18日、財務省の財政制度等審議会(会長・吉川洋東大教授)は、1997年4月の消費税率引き上げが景気に与えた影響について、主たるマイナス要因でなく、成長率低下は不良債権処理問題やアジア通貨危機の影響であったとした。

 この考え方は、当時の大蔵省内でよく語られていたものだ。実は、当時大蔵省で消費税引き上げが成長率を低下させたという一般的な見解になんとか反論したいということで、省内で検討が行われており、筆者もその一員であった。

 97年4月に消費税率の引き上げがあったが、景気は4月から9月頃までは持ち直していたこと、景気が悪くなったのは10月以降であったというデータが出された。そして、景気が悪くなった要因は4月の消費税率の引き上げではなく、7月からタイを中心に始まった金融危機や11月の北海道拓殖銀行、山一証券の破綻だという結論になった。

 その前提として、97年の消費税引き上げのとき、所得減税などを同時に行っていて全体でみると増税になっていないので、景気に悪影響があるはずはないというものがあった。当時のマスコミ報道では、消費税の増税面だけを抽出して、それが景気悪化と結びつけられていた。今回の財政審で学者が提出した資料は、当時の大蔵省の資料とうり二つだった。

 たしかに、消費税だけの増税面だけではなく他の税や財政支出と総合的に見るべきである。この意味で、97年の消費税引き上げをとらえてそれだけが景気悪化の要因というのは、適切ではない。

 ただし、現時点で97年の教訓を考えるとすれば、財政当局の主張通り、消費税増税が他の所得減税等で相殺されてネットでは増税でなかったとしても、その後のアジア危機などの経済変動であっさり景気が悪化したのも事実だ。

 その意味で、消費税増税のタイミングはよくよく考えるべきだ。これは97年当時から言われていたことだ。まして、現在検討されているのは、財政再建のための消費税増税である。つまり、ネットで増税である。これは確実に景気へのマイナス効果をもつ。

 小泉政権のときに、名目成長率がやや高くなりプライマリー(基礎的財政)収支の黒字化一歩手前までなった。名目成長すれば財政再建できるわけなので、「増税」ではなく、名目成長による「税収増」を目指すべきだ。増税と税収増は経済に負担があるかどうかの差である。財政当局は税収増の後で足りなければ増税というセオリーを忘れてはいけない。急(せ)いては事をし損じる。(嘉悦大教授、元内閣参事官・高橋洋一)

 

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