東シナ海と中国の脅威 米海兵隊が沖縄に必要な理由

2011.07.01

 最新鋭の輸送機オスプレイが、沖縄の米海兵隊基地(現在は普天間)に2012年後半には配備されると公表されるや、琉球新報や沖縄タイムズなどはあらためて反基地キャンペーンを強めている。

 条件付きながら、かつては普天間の県内移転に賛成だった仲井眞弘多・知事でさえ、「もし配備なら基地は県外」と明言、基地問題の解決が一層、遠のきそうな雲行きだ。

 そんなおりアメリカの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」の上席研究員、ブルース・クリングナー氏が、「なぜ沖縄に米軍が必要か」という論文を発表した。ヘリテージといえば、レーガン政権時代に大活躍した政策立案者を多く輩出、いまも東アジア情勢の分析には定評がある。

 そのシンクタンクの東アジア専門家が沖縄に基地が必要な理由として指摘したのが「中国脅威」と「北朝鮮有事」の2点だった。

 中国はいま、核心的利益と位置づけた南シナ海や東シナ海で周辺国との対立を強めている。南シナ海では南沙諸島などをめぐってベトナムなどと衝突、東シナ海では尖閣諸島をめぐって日本と対峙している。

 南シナ海での衝突がいかに深刻かは、ベトナム兵が中国官憲との銃撃戦で命を落としたり、ベトナム探査船の調査用ケーブルが中国巡視艇に切断され、ハノイで異例の抗議デモが繰り広げられたりしたことでわかる。尖閣諸島のケースも想像以上に深刻だ。

 東シナ海周辺を警戒する第11管区海上保安部のベテラン保安官が、次のような話をしてくれたことがある。

 事件は1978年3月、霧の濃い早朝に起きた。300隻を超す中国漁船が尖閣沖に突如として現れた。巡視艇で監視活動をしていたこの保安官らは、おびただしい漁船の群れに目をこらした。重機関銃を備えた改造船が含まれ、乗組員には軍服姿さえ確認できた。そのうち米軍機が飛来したが、旋回するだけで、巡視艇1隻では手も足も出なかったそうだ。

 結局、至急報を受けて全国の海保艇が集結できたのは、その日の夕暮れ時。それまで中国漁船は何度か上陸を試みたが、波が高いうえ浅瀬が怖いのか失敗を繰り返すだけだった、という。

 この事件が示すように、中国側の狙いは係争中の島にまず上陸し、実行支配を既成事実化することのようだ。実際、南シナ海では漁民がまず上陸して簡単な建造物を造り、その排除に乗り出せば中国海洋調査船が保護に乗り出すケースがあった、という。

 問題は上陸されると奪還がほぼ不可能になる点だ。もちろん国連に訴え、平和的解決を図ることはできるが、中国が常任メンバーの安全保障理事会が具体的な決定を下すとは思えない。

 クリングナー氏はそうした抜き差しならない対立も想定して、「沖縄の海兵隊員は尖閣を含む日本領を守る決意がある。自らの血を流す覚悟だ。」(太平洋海兵隊司令官のキース・シュタルダー中将、2010年退官)や「実行支配された島を取り戻す能力があるのは米海兵隊だけだ。」(国防総省幹部)などといった証言を紹介している。

 ちなみにオスプレイは垂直離着陸が可能な兵員輸送機で、こうした奪還作戦には最適だ。米海兵隊が中国にとって目障りこの上ないのは間違いないだろう。

 ■前田徹(まえだ・とおる) 1949年生まれ、61歳。元産経新聞外信部長。1986年から88年まで英国留学。中東支局長(89〜91年)を皮切りに、ベルリン支局長(91〜96年)、ワシントン支局長(98〜2002年)、上海支局長(06〜09)を歴任。

 

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