沖縄反戦運動と北朝鮮 めざすは基地撤廃

2011.07.08

 2009年4月、北朝鮮が人工衛星と称した飛翔体が日本の東北上空を超えて太平洋に落下した。飛翔体とはこの場合、ミサイルやロケットのことを指しており、当時、領土の上空をそうした危険物が飛ぶことに大騒ぎになったが、沖縄では不思議なほど冷静だったことを覚えている。

 理由は簡単だ。米軍基地のある沖縄周辺にミサイルが落下するようなマネが、北朝鮮にできるはずがないと誰もが考えたからだ。

 実際、基地の存在理由に「北朝鮮への抑止」が指摘される。前回紹介したクリングナー氏も「中国脅威」とともに「北朝鮮有事」への対処を主な任務と書いているが、第2次朝鮮戦争勃発や、大量難民の流出などが十分に想定されるいまだからこそ現実味がある。

 だが、米軍基地撤廃を訴える沖縄の反戦平和運動家たちはこうした「北朝鮮有事」について口を紡ぐか、「逆に米軍がいるから有事が起きる」といった論理で否定することが多い。

 例えば「日本チュチェ(主体)思想研究会」の主要メンバーの大半は、沖縄在住だ。チュチェとは金日成主席が唱えた独立独歩を意味する北朝鮮の指導思想のことだが、この思想を研究するメンバーたちが実は最も熱心な反基地運動家たちでもある。

 ちょうど2年前、このチュチェ思想研究会の全国連絡会長で元沖縄大学学長の佐久川政一氏に取材する機会があった。同氏は「一坪反戦地主会」にも属している。ハンカチほどの広さの基地をそれぞれに所有して闘争を繰り広げるこの地主会は、沖縄タイムスや琉球新報など地元マスコミ幹部や県庁幹部ら沖縄政財界を縦断する反戦平和グループとされている。

 大学近くの喫茶店で会った佐久川氏は高齢のため闘争の最前線にもういないと話し、柔和な表情が印象的だった。だが、その内容はやはり驚くべきものが多かった。

 「地主会には80年代初め、大学の同僚に誘われて入会した。基地反対は沖縄の常識だ。チュチェ思想研究会は金日成の自主路線が気に入ったので入会した。特に2つに関係はないが、沖縄の基地問題を考える場合、(植民地支配からの)解放という点で非常に参考になると考えた」

 「北朝鮮の人工衛星(飛翔体)打ち上げや核兵器開発を騒いでいるが、実はアメリカが北朝鮮を抹殺しようとしていることへの対抗措置だ。そういう印象を私たちは持っている。基地の必要性についても中国や北朝鮮脅威への抑止力という人がいるが、北朝鮮の責任者は『日本は2度(豊臣秀吉の朝鮮出兵と明治の日韓併合)も侵略したが、北朝鮮には侵略の歴史がない』と強調した。つまり脅威は逆方向からなわけだ」

 こうしてみると佐久川氏ら北朝鮮擁護派は「敵(日米)の敵(北朝鮮)は味方」論で動いているように見えなくもないが、さらにみていくと沖縄には基地撤廃のための独立国家論や国連統治論までが存在する。

 次回はこの2月まで民主党沖縄県連代表だった歌手の喜納昌吉氏の国連委任統治論などを紹介したい。喜納氏は2000年に北朝鮮を訪問、いまも人道上の観点から北朝鮮への経済制裁には反対を表明している。

 ■前田徹(まえだ・とおる) 1949年生まれ、61歳。元産経新聞外信部長。1986年から88年まで英国留学。中東支局長(89〜91年)を皮切りに、ベルリン支局長(91〜96年)、ワシントン支局長(98〜2002年)、上海支局長(06〜09)を歴任。

 

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