増税しなくても被災地復興の策はある

2011.08.10

 米格付け会社による米国債の格下げで、世界経済の減速懸念が広がっているが、菅直人政権の対応はあまりにも鈍い。東証も週明け、大きく値を下げた。日本経済を強化し、国民生活を守る覚悟や手腕があるのか極めて疑わしい。

 こうしたなか、東日本大震災から5カ月になるが、菅政権による被災地復興は遅々として進まない。今回は、復興財源の問題について考えたい。

 振り返ると、関東大震災(1923年)の被害総額は約55億円(当時のGDPの36・9%)。復興予算として8年間で約14億円が支出された。当時の国家予算が13億円だから、1年分以上になる。阪神・淡路大震災(95年)の被害総額は約10兆円。5年間で5兆円が支出された。

 今回の被害総額は約16兆円〜25兆円とされ、これに福島第1原発事故の広範囲な被害も加わる。菅政権は復興財源として臨時増税を打ち出しており、自民党内にもそうした考え方があるが、これは完全に間違いだ。

 日本では10年以上も深刻なデフレが続いている。震災による電力不安もある。こんな状況下で増税に踏み切れば、国民の消費マインドは冷え込み、企業は国外に逃げ出し、日本経済に甚大なダメージを与える。まさに自殺行為。経済が破壊されたら、復興も財政再建もあり得ない。

 阪神大震災後の景気回復軌道にあった97年、橋本龍太郎政権は消費税増税に踏み切った。消費税収こそ当初増えたが、国民負担の増大で日本経済は腰折れし、所得税収と法人税収は激減した。この苦い教訓を忘れてはならない。

 私が参加する超党派「増税によらない復興財源を求める会」では、増税ではなく、復興債や埋蔵金を復興財源に活用すべきとの声明を発表した。衆参両院議員約200人の署名とともに、菅政権に申し入れている。

 復興財源確保の第一歩として、政府と日本銀行の間で政策協定(アコード)を締結し、必要な財源調達として、政府が発行する震災国債を日銀が原則、全額買い切りオペするように求めている。

 深刻なデフレと円高が進行している現状では、相当規模の買い切りオペを行ったとしても、過度なインフレを防ぐことは十分可能だ。

 米国のバーナンキFRB議長は「われわれはインフレをコントロールできる」と自信満々に語っているそうだが、日本にできないことはない。それで、円の信認が崩れることもない。

 「財政規律が失われ、国債が暴落しかねない」という批判もあるが、財政破綻を防ぐには基礎的財政収支のGDP比をプラスにする必要がある。その要は名目成長率を引き上げることだ。

 小泉純一郎政権時代の2003年、プライマリーバランス(基礎的財政収支)はマイナス28兆円だった。20年度の黒字化目標に向けて、私が政権を担当した07年の予算編成ではマイナス6兆円まで切り詰めることができた。22兆円の増税をせずに財政は好転したのだ。

 買い切りオペで貨幣供給が増えれば、デフレ脱却や円高是正、名目成長率の上昇も期待できる。真の意味での財政再建に役立つ。経済成長と適度なインフレによって生み出される果実によって、増税せずに難局は乗り切れる。経済政策を間違ってはならない。(自民党衆院議員)

 

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