都の発電所構想、東電に“風穴”が狙い

2012.07.03


猪瀬直樹・東京都副知事【拡大】

 石原慎太郎知事率いる東京都が計画する天然ガス火力発電所新設構想が話題となっている。

 日本経済新聞(6月28日夕刊)が1面トップで「東京湾岸に火力10基−都が主導、400億円ファンド」と報じ、翌日の産経、読売以下各紙(朝刊)もフォローした。

 国内外の機関投資家から400億円規模の資金を集め、メガバンク系と独立系の投資ファンド2社が運営する。東京都はそれぞれのファンドに15億円ずつ出資する。10万キロワット級の発電所を10基建設するが、1基目の発電所は2年後の完成を目指す−日経新聞報道の骨子である。

 筆者の手元に「東京都の官民連携インフラファンドのGP(ゼネラルパートナー)選定について」と題したA4版3枚のペーパーがある。ここには、新聞報道では言及がなかった企業名が記されている。「メガバンク系」とされたのは、みずほ銀行(証券)系列のIDIインフラストラクチャーズ。そして、「独立系」がスパークス・アセット・マネジメントである。

 選定理由を挙げた都のペーパーには、IDIは既に発電インフラファンドを運用している、発電所経営ノウハウがある、とある。また、スパークスは再生可能エネルギー、スマートグリッドへの投資に専門チームがある、スマートグリッド実証実験(六ケ所村)に参画−と記されている。

 ペーパーを読む限り、ベスト・マッチングのように思える。だが、みずほ銀行(旧富士銀行)は東京都の指定金融機関であり、スパークスの経営陣には野村証券系が多い。

 それはともかく、この構想が注目に値するのは、東京電力が保有する大井火力発電所(品川区八潮。105万キロワット)の買収まで考えていることだ。東電は火力発電所を25カ所保有するが、中でも大井は、千葉県の姉崎や富津火力発電所に比べると規模は小さいが緊急設置電源を有している。

 目の付け所がいい。この構想を主導しているのは猪瀬直樹副知事である。関西電力大飯原発の再稼働問題での積極的な発言だけでなく、26日の東電株主総会や28日の東京メトロ株主総会に出席し発言するなど、猪瀬氏のメディアへの露出度は際立っている。

 意地悪い向きは次期都知事を狙ってのことだと言うが、テレビを通じての猪瀬氏の指摘や提言には説明力があり、特に主婦層の受けがいい。今回の構想は、東電による地域独占の供給体制に風穴を開ける狙いがあり、慎太郎氏も満足しているようだ。(ジャーナリスト・歳川隆雄)