戦略の階層 上位が下位を決定する原則

2012.11.13


戦略の階層【拡大】

 われわれ日本人の多くは、いままで「戦略」というものを、学校や職場でまともに習ったことがない。習っていないわけだから、分からなくても当然である。

 「いや、会社で経営戦略を習ったことがある」という方もいるだろう。しかし、そもそも「戦略とはどういうものか」という本質的なことは絶対に習わないので、ある程度まで理解できても、根本的なところが身に付くはずがない。

 では日本人は戦略を体得できないのか? 私は「絶対にできる」と考えている。だがそのためには1つのヒントが必要だ。それが「戦略をタテに考える」ということだ。

 戦略は、上下の「階層」に分かれている。

 例えば国家が戦争をするとき、まず必要なのは、優秀な兵隊や戦車・戦闘機を支える「技術」である。これらは最も具体的なものだが、使いこなせないと意味がない。そのために必要になるのが「戦術」で、さらに、いくつかの戦術を使って大きなプロジェクトを達成するために「作戦」が必要だ。

 ところが作戦だけは戦争に勝てない。勝つためには作戦をいくつか束ねて軍事的に相手を圧倒するための「軍事戦略」が必要になる。その上で、国家の資源を戦争で活用するための「大戦略」が必要になる。

 大戦略を準備するには軍人だけでなく政治家のバックアップが必要で、政治家は国の「政策」を決定する。そして政策の最終的な方針は、その国のリーダーが持つ「自分の国は何者で、どのようなビジョンがあるか」といった「世界観」に決定されるのだ。

 つまり戦略というのは、下から順に技術、戦術、作戦、軍事戦略、大戦略、政策、世界観とレベル分けされる。しかも「上位のものが下位のものを決定する」という原則があるのだ。

 個人にこの階層を当てはめると、語学や資格の習得などは最底辺の「技術」レベルになる。そのため、やみくもに技術を得ようとしている人は、さらに上の階層から技術習得の意味を位置付けている人には勝てない。

 また、日本が国家ぐるみで提唱している「ものづくり」も、実は「技術」レベルでしかない。これでは上から戦略を組み立てている国には勝てるわけがない。

 次回は「戦略の階層」を踏まえ、なぜ優秀だといわれている日本の企業や個人が負け続けているのか詳しく説明したい。

 ■奥山真司(おくやま・まさし) 1972年、横浜市生まれ。戦略学博士(PhD)。専門は地政学と戦略論。ブリティッシュ・コロンビア大(カナダ)卒。英レディング大学院で戦略学の第一人者、コリン・グレイ教授(レーガン政権の核戦略アドバイザー)に師事。『世界を変えたいのなら一度“武器”を捨ててしまおう』(フォレスト出版)など著書、訳書多数。ブログ「地政学を英国で学んだ」で日々情報を発信中。

 

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