「陸」と「海空」どちらが大事か

★(3)

2013.09.20

 「島国においては海空軍と陸軍どちらが大事か?」という質問を受けることがある。経済的また安全保障上の状況から最近は陸上自衛官ですら「海空がまずは重要でしょう」と言っているのを聞く。

 これに私ごときが答えるよりも、ぜひ経験者に聞いてみようと第2次世界大戦時の英国首相、ウィストン・チャーチル著『第2次世界大戦』をひもといてみたところ、ちょっと意外な見解を知った。

 1940年、ドイツは英国本土上陸(『あしか作戦』)を計画する。まずは制空権を取るため空からの攻撃を敢行。これを阻んだのはスピットファイアなどを駆使した英国の空軍力だった。かの有名な「バトルオブ・ブリテン」である。島国の防衛において制空権(制海権は言うまでもなく)の確保がいかに重要であるかが分かる事例だ。

 しかし、チャーチルは、この空軍の活躍に大いなる称賛を送ると同時に、こんな分析もしていたのだ。

 「ヒトラーが恐れたのは英国の陸軍力だ」

 長文なので引用は避けるが、要するにそういうことなのだ。ドイツはかつてダンケルクで英仏軍を追い詰めた際に、立ち塞がったマチルダ戦車を主力とする英国の陸戦力の手ごわさを知っていた。だからこそ『あしか作戦』においても「英陸軍とは戦いたくない」と強く思ったに違いないとしている。

 それゆえ必死になって制空権を奪う必要があった。もし、英陸軍が弱ければ、強行上陸もできたはずだというのだ。

 英陸軍の粘り強さと戦車の威力をダンケルクの際に埋め込まれたヒトラーは弱気だった。大陸国ゆえの海に対する自信のなさ、その後のソ連との戦いに必要な自国の戦車を失う不安、英国との講和を考慮した…など政治的な理由もあったかもしれないが、チャーチルは自信を持って陸上戦力の効果を述べている。

 思えば日本も、古くは元寇、そして終戦間際の「オリンピック作戦」「コロネット作戦」といった本土上陸の企てを阻んだのは、日本人の最後まで戦いを諦めない精神力に怯んだからという説もある。

 巷では、尖閣に戦車を置けるのかなどという論議もあるようだが、肝心なのは、仮に某国がそこに手出ししたら「その先に何が待っているか」という意志を示すことだろう。

 そういう意味で、今、海空のプレゼンスや統合戦力で相手の侵略意図をくじく必要があるのはもちろんだが、それは「重視」ではなく「増強」という言葉でいいのではないだろうか?

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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