小惑星探査機「はやぶさ」成功の影に高性能パラシュートの存在

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2013.10.01

 小惑星探査機「はやぶさ」が7年間のミッションを終え、大気圏に突入し、燃え尽きたあのシーンは非常に印象的だった。

 一方、小惑星「イトカワ」からサンプルを回収するためのカプセルだけは地球に帰還した。

 この際のパラシュートは日本唯一、落下傘の製造・開発をし続けている藤倉航装が手掛けたものだ。2010年のこの日のために1997年から開発が始められていたという。

 宇宙でサンプルを収納したカプセルは、超高速で大気圏に突入し地球に帰還することになるが、高速のままでは着地の衝撃に耐えられないため減速用のパラシュートが必要となる。空気の抵抗などを利用し、速度を調節できるなどのノウハウは同社の長年の研究成果だ。

 「しかし、7年間開かない落下傘は初めての試みでした」

 それだけの期間、低温、真空の中でじっと収まっていて、ある時、突如すさまじい衝撃を受けながら、無事に落下傘が開かねばならないという、これまでにはない難題への挑戦だった。

 そのためには、宇宙空間でも機材が劣化しないこと、そして、当然のことながらメンテナンスの必要がないように工夫しなければならなかった。パラシュートをカプセルに収めるまでに、ありとあらゆる試験を繰り返し、その結果がまさに7年後のあの瞬間だったのだ。

 しかし、パラシュートが無事に開き、落下ができたとしても、そのまま砂漠に落ちてしまったら行方不明になってしまう。

 そのための技術はIHIエアロスペースが発揮している。

 「広大な砂漠で小さなカプセルを探すのは、関東平野から中華鍋を1つ探し出すようなものです」

 同社がそう紹介しているように、この解決が最終的な問題となっていた。そこで、パラシュートが開傘すると、地上に近い側から鎖状のアンテナが出て垂れ下がり、自分の位置を知らせる信号を出し続けるような仕組みが施されたのだ。

 それも、捜索されている昼間だけ発信し、夜はストップするという節約機能まで付けられた。着地後は強風でパラシュートが引きずられ、大きく移動してしまうことが考えられるため傘の根元を火工品で切り離すノウハウも活かされた。

 この時の成功が日本人に与えた感動は大きくまた、世界に与えたインパクトも大きかったと言えるだろう。

 実は、こうした技術はそもそも自衛隊の装備品に活用されているものが多い。車両などを上空から投下する物料投下用の落下傘が同じ機能を持っているのである。詳細は次回に。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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