空挺の重要軍事品「物料傘」 多様な発想で積極活用を

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2013.10.08

 小惑星探査機「はやぶさ」のサンプル回収用カプセルの落下傘は自衛隊の装備品技術が発揮されたものだったと前回、書いた。落下傘の老舗メーカーの藤倉航装と、イプシロンロケット開発企業であるIHIエアロスペースの技術が生かされたものだ。上空から物資を投下する落下傘を物料傘と呼ぶが、藤倉が重物料傘を、IHIAがその発展型を手掛けた。

 3つの傘が付いているが、よく見るとすべてが同時に開いていないのが分かる。

 「すべてが一気に開傘すると吊下げロープに急激に大きな荷重がかかるので、徐々に大きく開く仕組みになっています」

 発展型はこうした機能に加え、地上に落下した際に衝撃を吸収する能力は世界唯一のもので、通常であれば20Gほどかかるが日本製は10G以下だという。転倒防止機能もあり、これも世界最高水準だ。さらに、地上では風を受けて落下傘が大きく引きずられることが考えられるため、落下傘分離器により離れることが可能になっている。

 わが国の場合は、投下地点が平らな場所よりもむしろ山林などであることが想定されるため、「降りてから」どうなるかを研究した結果なのだ。

 最近、装備品輸出については官・民で前向きな論議が行われているようだが、なかなか良いアイテムといえないだろうか。

 そもそも物料傘は何のために必要なのかについて、改めてここで触れておきたいと思う。

 空挺隊員の任務は速やかに敵の後方や空白地に進入することだが、空挺隊員が無事に降下しても人だけでは戦えない。そのため、車両をはじめ必要な物資を投下するのである。飛行機に搭載できない大きな物も物料傘があれば届けられ、輸送困難で孤立してしまっている状況でも可能性が開ける。こうした意味で、軍事的にも重要な位置付けにあるのだ。

 さらに、かねて言われているニーズがある。

 「早い時点で食べ物だけでも落としてもらえれば…」

 東日本大震災の被災者が、発災直後に思ったこととして聞かせてくれたことだ。

 それまで自衛隊では国民に対する「投下」について消極的だった。自衛隊は空中からの投下を禁じた航空法は適応外ではあるが、危険を伴うことや、災害時に対応するほど十分な備えもなかった。また、海外での活動においても物資は「手渡し」の方が丁寧であるといった理由もあり行われていなかったようだ。

 しかし今後は、せっかく持っている物料傘の技術をさまざまな面で役立たせる発想があっていいのかもしれない。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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