陸自の弾薬問題で浮き彫り 法令の所管など根本的議論を

2013.10.29

 最近、驚いたのは、「陸自の弾薬管理ずさん」という報道である。

 自衛隊における弾薬の管理は極めて厳密で、訓練後、薬莢(やっきょう)の数が合わないなどあれば部隊総出で探し、翌日には他の部隊も加わって見つかるまで数週間でも、数カ月でも訓練を止め捜索を続けることは有名だ。

 そんな組織が、88億円もの弾薬を? いい加減な管理をしていた? 本当であれば国民の安全にも関わることであり、重大な責任問題である。それに、常日頃から「そこまでやるのか!」というほどの厳しい取り扱いを実行し、汗を流して地をはうように空薬莢を探している隊員たちに、とても顔向けできないだろう。

 しかし、10月18日、会計検査院から正式な検査結果が公表されたものを見ると、真実は受けた印象とは違っていた。

 それによると、陸上自衛隊では防衛火工品の一部を製造会社に保管させているが、請け負った会社の帳簿上のミスを把握せずにいたことや、任意の立ち入り調査を行っていなかったことなどが指摘されている。弾薬類を紛失したなどの事態が発生したわけではない。

 そうした実態から、今後は保管責任の範囲を明確にし、自衛隊側がもっと踏み込んで管理状態をチェックすべきだとする今後の改善の方向性を示したものと私は理解した。

 これまでも再三、述べてきたように、銃砲弾火薬類を扱う自衛隊や製造企業は、武器等製造法や火薬類取締法などの下で業務を行っている。その内容は極めて厳格かつ細かいものだ。作業する部屋の間取りから机や電気、コンセントの類まで制約がある。

 帳簿の記載漏れなどがあったことには違いなく、擁護するつもりはないが、このような微に入り細にわたる法令遵守のために関係企業が多大なコストを費やし、神経を使ってきたことは確かだ。

 もう1つの問題として、これらの法令の所管が防衛省ではなく経済産業省であることもあげられるのではないだろうか。自衛隊は民間企業に立ち入り調査する権限などは持っていない。それゆえ、最初の報道は陸自にとって「寝耳に水」だったことだろう。

 今回の処置要求によって責任の範囲が明確になり、整理されるのなら意義深いことだ。しかし、「ずさん」の言葉が浮き立ってしまったのは残念でならない。

 今後、企業にしっかりしてもらうことはもちろんだが、そもそも、これらの法令について防衛省・自衛隊の立ち位置が分かりにくいままでいいのかどうか、根本的な制度も含め議論されるべきだ。むしろ、そのような現状こそ広く知られなければならないだろう。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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