装備品製造に組織的な妨害 「赤旗を掲げ」「支援者とともに」

2013.12.03

 「なんとか引き受けてもらえませんか」

 装備担当者が部品の製造を直々に頼んでも、工場の多くは戦争の惨禍を思い出したくない心情や、発足したばかりの自衛隊に対する世の中の風当たりも強かったこともあり、反応は冷たかった。

 そんな中でも少しずつ「力になれれば…」と、一肌脱いでくれる社長も出てきていたが、どこも資金に乏しく設備投資もできない。そこで、そうした最低限の経費を国が負担し、一定の利益を約束する原価計算方式が始まったのだ。

 しかし、小規模企業による小ロットの部品製造、「一定の利益」といっても、わずかであることは言うまでもない。日本の防衛基盤を支える大事な仕事だと理解したうえで、いわゆる「防衛産業」となった会社にとって、その後の試練は想像以上に熾烈だった。

 「食事もノドを通らず家族は皆、痩せ細りました」

 ある企業では、社員として採用を決めた学生が、教員への暴力行為をしていたことが判明した。内定を取り消したところ、連日の抗議運動へとエスカレートし、工場は操業不可能な状態に陥った。

 「会社と向かい合わせの小学校の入り口で、赤旗を立て赤鉢巻、腕章姿で支援者らとともにマイクを使い大声で抗議行為し授業を妨害…」

 この問題の裁判の記録には、当時の様子が詳細に残っている。「赤旗を掲げ」「支援者とともに」といったところからも、これが単なる腹いせや個人の感情ではない組織的な妨害活動であったことは、時代背景からしても疑問の余地はないであろう。

 「会社の門塀のみならず付近一円のガードレール、電柱、掲示板、国鉄駅その他の公共的施設などにも多数の抗議ビラを貼り、あるいは出勤してきた被申請人会社の庶務課長、総務部長らをとらえて、会社門前付近の塀やガードレールに押しつけたり、小突き回すなどの行為をした…」

 恫喝はさらに激しさを増し、制止を振り切って会社の中に押し入り、作業場付近で拡声器を使い大声で抗議演説をしたり、会社役員の自宅へ押しかけて周辺にビラを張り、やはり拡声器で騒ぐなどの行為を繰り返したという。

 当時、こうした騒ぎは、珍しくなくなっていたが、自衛隊の協力企業ということで目を付けられたケースもあるだろう。もはや、国や軍のひと声で無条件に誰もが従える時代ではなかった。

 そうした中で、戦略的に複数の製造拠点を維持するため、国内防衛関連企業の数々を確立していく作業は生半可なことではなかったはずだ。

 とにかく、こうして、わが国は、やっとのことで防衛装備品製造基盤を構築してきたのである。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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