武器輸出緩和の甘い認識に危機感

2013.12.17

 戦後、なんとかして自衛隊装備品の国内製造基盤を構築すべく歩み始めたわが国であったが、敗戦と占領政策により立ち遅れた能力を取り戻し、技術を積み上げていくのは、容易ではなかった。

 「我慢が必要です」

 防衛技術育成の最大の問題は、育つまでの期間、辛抱強く付き合わなければならない点だ。「兵器の独立なくして、国家の独立なし」の理念を貫いた大山巌元帥の時代も同様であった。

 ほとんどの兵器を外国製に頼っていた当時、例え性能が劣っても国内開発にこだわるのは相当な決心が必要であったことだろう。

 「こんな物は使えない!」

 きっと、そんなやり取りもあったに違いない。しかし、大山は異論もある中で、初の国産となる村田銃の採用を決め、結果的に日露戦争を勝利に導いている。

 「基盤か運用か」という二律背反は、軍における普遍的な悩みだと言えるだろう。目の前に危機が迫っているのに、国内開発を待つなどと悠長なことは言っていられない。

 それは、いつの時代も、どこの国でも同じである。

 しかし、日清・日露戦争の時代は、今よりもはるかに切迫していたはずだ。当然、現代感覚とは全く違う時代との単純比較はできないが、申し上げたいのは、「防衛生産・技術基盤の維持」と簡単に言っても、これを達成することについて、私たちの認識はまだ甘いのではないかということだ。

 時には失敗し人命を失うかもしれない、四面楚歌(そか)で誹謗(ひぼう)中傷を浴びせられることも覚悟しなければならないだろう。それでも、絶対に動揺しない鋼のような意志がなければ、とてもじゃないが国産兵器を作る、などということは成し得ない。

 国産を信じる思いがなくて、「武器輸出3原則の緩和」などと言っても虚しく響くばかりだ。繰り返し述べてきたように、これから徐々に道が開けると予想される「輸出」も「国際共同開発」も、それだけで防衛産業支援策にはなり得ない。

 それどころか、むしろ、熾烈な世界市場にのみ込まれるリスク、日本独自の技術が盗まれる恐れ、そして自衛隊の情報や能力を不作為に流出させてしまう危険性さえある。

 政府の方針に水を差すつもりは全くない。また、国産至上主義の主張をしているわけでもない。しかし、最近、各所で散見される「防衛費増額と3原則緩和で防衛産業が潤う」などという世間の誤認識や甘い見立てに、危機感を覚えざるを得ないのである。

 国家の独立も兵器の独立も、苛烈にして穏やかならざるもの。その立脚点から外れると、不幸な結果さえ招くことになるだろう。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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