優れた技術を国力に生かせぬ“体質” 日本の弱点を象徴

2014.01.07


東京・市ヶ谷の防衛省【拡大】

 以前、埼玉県のある町工場を訪れたとき、ちょっと驚いたことがあった。そこは、防衛装備品のいわば孫請け会社で、まさか、ここが防衛産業の一端を担っているとは思いもよらないたたずまいであったが、「明日はオーストラリアの企業が来るんですよ、その次は…」とのことだった。

 つまり、ここの部品製造技術を見込んで海外からアクセスが絶えないというのだ。HPに英語表記をしている点も大きいのかもしれない。

 それにしても、諸外国の情報収集力には恐れ入る。しかし、これはわが国の弱点を象徴するようなことではないだろうか。かねて日本は、持っている技術を国力に生かせないといわれてきたからである。

 先の大戦の敗因が語られる際に、「レーダー技術で負けた」と言われることが、しばしばある。しかし、正確には、レーダー技術がなかったのではなく「能力を活用できなかった」のである。

 後に八木アンテナ社長となる八木秀次と宇田新太郎により発明された「八木・宇田アンテナ」は、大正時代、2人が東北帝国大学に所属していたころに基本原理が発見され、論文が発表された。

 ところが、これに注目したのは日本ではなく欧米であった。イギリスなどでは次々に艦艇や航空機に取り入れ、1940年の「バトル・オブ・ブリテン」でもこのレーダーが活躍し勝利に導いたといわれている。

 その一方で、日本の陸海軍は、敵前で自らが電波を発することは「闇屋に提灯」すなわち、わざわざこちらの位置を知らせるようなものだとして重要視せず、研究開発予算も微々たるものでしかなかったという。海軍ではそれよりも、夜間においても数十キロ先を見ることができたという艦上見張り員の視力を信じたのだ。

 そんな中、42年に日本がシンガポールを陥(お)とした際に鹵獲(ろかく=敵対勢力の保有する兵器や装備などを入手すること)した英軍レーダーの資料に「YAGI」と記されていた。しかし、読み方さえ「ヤギ」なのか「ヤジ」なのか分からず、捕虜の英軍兵士に聞いてみると「あなた方は八木アンテナを知らないのか!」と驚かれたのだとか。

 こうしたことがあり、ようやく日本は自国の優れた技術に着目しなかったため、みすみす敵国に奪われたことに気付くのであるが、それはあまりにも遅すぎた。すでに米国にもこの技術は渡り、その後のミッドウェー海戦そしてマリアナ沖海戦で手痛い敗北を期すことになるのだ。

 技術戦略の不在により無数の同胞を失うことになったこれらの痛恨事から幾年月…、わが国は全く変わっていない。それはなぜなのか。その理由を探っていきたい。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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