技術の効率的な運用を阻む「日本人気質」とは

2014.01.21

 前回の「ニッポンの防衛産業」では、戦時中、八木アンテナの技術を重要視せず戦力化できなかった日本と、これを見付け出し、柔軟かつスピーディーに運用に至らせた米・英とは、技術戦略において雲泥の差があったことを書いた。

 このことは国の無策といえばそれまでであるが、わが国の将兵がそれだけ優秀であったという側面でもある。何しろ、何十キロも先まで目をこらし、「敵艦見ゆ!」と発見できるのだから、未知の機器を開発するよりも彼らを信じようとしたその心情を全面的に否定はできない。

 実際、現在でも自衛隊では隊員の運用能力でなんとかしてしまう、といったことは多いようである。こうした日本独特の事情が、画期的な装備の進歩を特に必要としないといった皮肉的な側面もあるのかもしれない。

 しかし、技術戦略が軍事力と結びつかない原因はそれだけではない。

 「あの人は学者肌だからなあ」

 技術畑の人に対する、これもよく聞くセリフである。だが、考えてみれば技術者は多くが学者であり、軍事活用のセンスがなくても仕方がない。

 そもそも、技術者になるような人は、軍事に疎いタイプが多い。研究には関心があっても、それを実用化すること、しかも戦争というかなり荒っぽい運用を強いられることは耐え難いはずなのだ。

 また、陸海軍の装備研究がバラバラで、互いに何をしているのか知らないといった状況も、ムダを生み、非効率だったと考えられる。

 つまり、優れたアイデア、優秀な運用力、個々に能力を有していても、それらをマネジメントする力が働かなければ、ほとんど意味がないのである。問題は、この古くて新しい課題が、いまなお画期的な解決をみていないことだ。

 一方、米国はどうだったのだろうか。

 第2次大戦が始まったとき、米国はドイツなどと比べて兵器開発の遅れを感じていたという。そこで、1940年、フランクリン・ルーズベルト大統領の鶴の一声で、国家防衛委員会(NDRC)が設立され、米国内のあらゆる分野で活躍する科学者など6000人を動員し、科学技術の戦争に勝つべく体制を構築したのである。

 陸海空軍が必要とする技術要望をNDRCが吸い上げ、その交通整理をしたという。

 そういえば、日本で戦前から兵器製造を担っていたある企業では、陸海軍の両方から仕事を請け負ったが、あまりに仲が悪いので、別会社を作ったのだとか聞いたことがある。ここにも、日本人らしい気質が軍事技術の効率的戦力化を阻んだ様子がうかがえるのである。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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