国の屋台骨を揺るがす防衛基盤の崩壊

2014.03.04


共同開発となったF2戦闘機【拡大】

 日本の場合、防衛装備品の共同開発ができるようになっても、気付いたら技術を盗られることになりかねない。

 「わざわざ経費を負担して、自分の財産を提供するようなものじゃないのか…?」

 国防に関わる企業の偽らざる胸中だ。日本は、要素技術は優れていてもそれをシステム化する能力については諸外国にまだまだ追いつかないと言われているからだ。

 「そんなことを言っている場合か!」

 と、怒り出す人も見受けられるが、企業の立場からすれば、やるやらないは「会社の勝手でしょ」ということではなかろうか(決して口には出さないが)。

 そもそも、流出の恐れは防衛秘密だけの話ではない。会社にとっての営業秘密があることを見過ごしがちだ。

 そう考えれば、「疲弊し切っている防衛産業は外に出るしかない」という見方は、言い方は悪いが「余計なお世話」でもある。飽きるほど述べているが防衛産業の、いや正確に言えば企業の防衛部門の明暗は、そのまま国の防衛に関わる問題である。仮に事業撤退しても、会社としてはかつてのような防衛費右肩上がりの時代ではあるまいし、惜しいとは思わないはずだ。

 それどころか、担当者は先の見えない悩みから解放され、生き生きするかもしれない。ショックはあるだろうが、別の部門に異動になるだけで、路頭に迷うことはない。

 すっかり防衛に尽くす気力が失われ、それでもまだ継続する動機や必要性があるとしたら、それは保有設備やこれまで育成してきた技術者の維持を考えてのことだろう。

 防衛産業について発信をしていると、たまに「企業の肩を持っている」と言われることがある。そのような印象を与えたとすれば不徳の致すところであるが、正直に申し上げて、現在、防衛に携わっている所が次々に撤退しても、私は別に構わない。体力がある会社だけが残ることになれば、それでもいいだろうし、輸入品だけで構成されても仕方がないことだ。

 しかし、どうしても気になってしまうのは、現場で開発や設計に必死にあたっている人、製造現場で汗を流す人、「国のため」と頑張っている町工場の社長…、そうした人々のことだ。

 よく、防衛産業はそんなに大変なら辞めてしまえばいいという声も聞かれるが、そうすれば膨大な数の下請け企業はどうなるのか? そこにまで思いを致さなければ、この問題は全体像が見えてこない。

 防衛基盤の崩壊は、国の屋台骨を揺るがすのである。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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