交渉下手な日本といい加減な“放置”が過ぎる米国の過去 

2014.05.04


甘利TPP相(右)とフロマン米通商代表(左)の交渉は、もっと賢くできたはずだが…【拡大】

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をめぐる日米協議は、先月24日の日米首脳会談後の延長交渉でも溝は埋まらず、「大筋合意」はできなかった。

 米国は、農産品重要5項目のうちコメや麦、砂糖には関税維持の容認姿勢を見せたものの、牛・豚肉、乳製品は譲歩せず、米国車輸入の数値目標や安全基準緩和にも厳しい姿勢を貫いた。

 甘利明TPP担当相とマイケル・フロマン米通商代表が計48時間も会談したというが、枠組みさえきちんと作っていれば、こんなものは1時間で解決したはずだ。何の方針もなく、1つずつ「豚はどうだ?」「ダメだ」「クルマはどうだ?」「まだまだ」とやっていたら、40時間やっても決裂する。

 米国の言い分の1つは、「米国で認められる米国車をそのまま日本に輸入できるようにしろ」というもの。だったら、日本はまずガツンと「マスキー法(1970年の排出ガス規制に関する法律)やカリフォルニアの排ガス規制のとき、日本はすべて準拠するように努力した。顧客の要請にこたえるマーケティングを世界中で(ハーバード大学などが)レクチャーしながら、自国企業にはそれを教えていないのか。そういう努力をどこまでしたのか言ってみろ」と主張すればいい。ハーバード出身のフロマン代表は身にこたえるだろう。

 そのうえで、「そうは言っても、あなた方の立場もわかります。日本の自動車会社各社からエンジニアを5人ずつ派遣し、1年間で日本の安全基準に対処できるように無料でお手伝いしましょう」。こういうふうに殴って叩いたうえで、下手に出ればいいのだ。

 農産物についても、過去の対米交渉から学ぶべきことがある。オレンジや牛肉、サクランボ、ピーナツの交渉をしたことを思い出してほしい。

 実家がピーナツの栽培農家のジミー・カーター大統領(当時)が、「ピーナツを開放しろ」と要求したが、開放してどうなったか。はっきりしているのは、千葉のピーナツが有名ブランドになったことと、米国産ではなく中国産が輸入されたことだ。それも量は少ない。

 米国は、日本の子供も自国のようにピーナツバターを大量にパンに塗ると思っていたのだろうが、日本人はそんなことはしない。「残念でした」だ。

 また、米国のサクランボを開放したことで、逆に山形の佐藤錦のうまさが際立つことになった。米国のサクランボを「いいな」と言っていまだに食べているのは私ぐらいなものだろう。牛肉もあれだけ熱い交渉をしたのに、オーストラリアのほうが伸びている。

 ということで、結局、これまで米国にバンバン叩かれたのに、いざ開放すると、ピーナッツも牛肉も米国以外から入ってきている。サクランボもオレンジもあまり大きな影響はなかった。日本人はミカンとオレンジの違いくらい、ちゃんと峻別できるのだ。

 米国もいい加減なところがあって、強硬に「オープンしろ」と言うわりに、実際に開放してみると何もフォローがない。うるさいのは、オープン前だけ。これをUSTRカーラ・ヒルズ前長官にただしたところ、「それは商務省の責任で自分たちは栓抜きと同じで開けるだけなんだ」と言って平然としていた。クルマも仮に米国の言うとおりにしても、日本人はドイツのクルマは買うものの、米国のクルマは買わないだろう。

 なのに、日本は交渉が下手だ。アメリカの役所の仕掛けもビジネスの世界も知らない外務省の役人や政治家が交渉しても、うまくいくわけがない。

 ■ビジネス・ブレークスルー(スカパー!557チャンネル)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。

 

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