安倍首相、拉致被害者奪還に手応え 制裁緩和を材料

2014.05.30


北が全面調査を約束したと発表する安倍首相。拉致被害者奪還の第一歩だ=29日、首相官邸【拡大】

 北朝鮮がすべての拉致被害者と拉致の可能性が排除できない特定失踪者について、包括的全面調査を行うことに合意した。安倍晋三首相は29日、日朝政府間協議について発表し、合意文書を公表した。これまで北朝鮮は日本を何度も裏切ってきたが、今度こそ誠意を見せるのか。安倍首相は警戒しながらも、拉致被害者奪還に向けた手応えを感じているようだ。

 「すべての拉致被害者のご家族がご自身の手で、お子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない」

 安倍首相は29日夕、官邸でこう決意を語った。

 日朝の合意文書によると、北朝鮮側は特別調査委員会を設置し、生存する被害者が発見された場合、日本に帰国させる方向で必要な措置を講じる。再調査合意は、金正恩(キム・ジョンウン)体制発足後初めて。日本側は、北朝鮮が拉致被害者らの再調査を開始した段階で、人的往来の規制など独自制裁措置を一部解除する。

 今後の焦点は、実際に拉致被害者の救出に結びつくかだが、北朝鮮はこれまで日本を騙し、拉致被害者家族を悲しませてきた。

 1997年、与党訪朝団に「(拉致被害者を)一般の行方不明者として調査する」としながら、存在を認めなかった。2002年の日朝首脳会談では、拉致被害者8人について「死亡」と説明した。04年の日朝実務者協議では、横田めぐみさん=拉致当時(13)=の「遺骨」とするニセの骨を出してきた。08年には、拉致被害者の安否に関する再調査に合意しながら、一方的に打ち切りを伝えてきた。

 このため、拉致被害者の支援組織「救う会」の西岡力会長は「今の時点で北朝鮮を信じられる根拠はない」と警戒する。

 安倍首相も、北朝鮮の卑劣な手口は知り尽くしているが、29日の記者会見後、周囲に「北朝鮮が、拉致被害者らが見つかったら帰すと約束したのは初めてだ」と評価するなど、一定の手応えを感じているようだ。

 確かに、北朝鮮は再調査について口頭ではなく合意文書に残したうえ、朝鮮中央放送など国営メディアも29日夕、「すべての日本人に対する包括的調査を全面的に同時並行して行うこととした」と発表している。

 北朝鮮は昨年12月の張成沢(チャン・ソンテク)処刑以降、経済的な後ろ盾だった中国との関係が悪化し、食糧や原油などの供給が激減した。2月中旬から国内の大半が干ばつに襲われ、農作物に被害が出ており、恒常的な食糧不足がさらに悪化する恐れが出てきた。金正恩体制を維持するには、拉致問題を進展させて、日本の「対北制裁」の緩和を求める必要があったとみられる。

 政府内には「相手が北朝鮮だけに楽観視できない」という見方も多いが、安倍首相は「拉致問題は自分でなければ解決できない」という信念から日朝合意を決断した。

 北朝鮮が今度も裏切った場合、安倍首相、いや日本人の怒りはもはや抑えられない。

 ■コリア・レポートの辺真一(ピョン・ジンイル)編集長

 「日朝協議では拉致問題に権限がある国家安全保衛部の関係者を同席させており、調査への姿勢は本気だとみていい。背景は『日朝協議を進展させて米国を6カ国協議に引っ張り出す』ことと『関係が最悪な中国や韓国への牽制』だ。日朝首脳会談までいけば、中韓のメンツは丸潰れになる。金正恩政権最初の調査でつまずくこともできず、ゼロ回答はない。何人かの生存者を出してくる可能性が高いと思う」

 ■早稲田大学国際教養学部の重村智計(としみつ)教授

 「北朝鮮が再調査に合意したことは大きな進展だ。経済状況が危機的状況にあることを物語っている。日本側が『再調査を約束しなければ日本も経済制裁の解除には動かない』という立場を貫いた結果だ。拉致被害者の死亡や未入国という証拠もない虚偽の情報を出すことは、もう許されない。日本政府は北朝鮮の立場が弱いということを理解し、交渉決裂も辞さない覚悟で臨むべきだ」

 

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