国産ヘリ技術、捨てるか生かすか

2014.06.10

 多くの人々を助ける役割を担っているヘリコプター、この分野での日本が誇れる技術は海上自衛隊の哨戒ヘリSH60Kでも発揮されている。

 これはSH60J対潜ヘリの後継機で、護衛艦に搭載され、対潜戦や警戒・監視、輸送・救難などの多様な任務をこなす。もともとは米国製のライセンス生産であったが、ほとんど日本オリジナルに防衛庁(当時)と三菱重工が仕上げた。まったく独自の改造開発で数々の能力向上が図られた。

 中でも、着艦誘導支援装置(SLAS)は、艦上に自動で着陸進入することができる世界で初めて実用化されたシステムだ。母艦とヘリの速度や位置情報を計測し、レーザーと赤外線によって安全な着艦へと導く。当然、計測には高い精度が求められるものだ。

 これにより、操縦者の負担は大幅に軽減されることになった。そして、気付けばわが国は、世界初となる有人ヘリコプターの自動着艦に成功していたのである。

 余談だが、私は先日、垂直離着陸輸送機オスプレイのシミュレーターを体験することがあった。その際、最も難しいことは何か聞いてみると、艦上への着艦であるということだった。

 SH60Kの開発に携わった海自OBたちは、「乗員から、悪天候時に命拾いしたといわれます」といい、この機能の意義に胸を張る。こうした得意分野は、今後、積極的に生かせるのではないかという気がしてならない。

 そして陸上自衛隊には、以前、当欄でも詳しく紹介した観測ヘリOH1がある。これは、OH−6Dの後継機として、川崎重工業を主契約社に1992年から開発が開始された自衛隊初の純国産ヘリである。同機のメーンローターに複合材を使用した無関節(ヒンジレス)ローターハブ技術は、米国ヘリコプター学会からヘリ技術で最も顕著な功績に対して贈られる「ハワード・ヒューズ」賞を受賞した。これは米国以外の国で初という快挙だ。

 陸自の次期多用途ヘリUH1Jの後継機UH−Xの開発計画では、関係した現役自衛官が仕様書作成の際、このOH1をベースにすることを目指したことが官製談合法違反と見なされて白紙に戻り、いまなお決定していない。この間にもUH1Jの退役は進んでいるのである。

 UH−Xの決定は、装備移転のアイテムとなり得る国産ヘリ技術を捨てるか、あるいは生かすかの判断となるのではないか。多くの人命を救ってきたヘリには、やはり「夢の実現」という言葉が似合う気がしてならない。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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