【高木桂一の『ここだけ』の話】自民が知事選「4連敗」も?! 長野で異例の“不戦敗”

2014.08.04


 滋賀県知事選で当選を決め、万歳する三日月大造氏。左は嘉田由紀子前知事。自民党の「滋賀ショック」は癒えない=7月13日夜、大津市【拡大】

 8月10日の長野県知事選投開票まであと1週間。戦況は「無風」ゆえに、中央の政界ではほとんど話題に上らない上、メディアも“素通り”を決め込んでいる。しかし「無風」であっさり片付けるわけにはいかない。平成10年4月の民主党誕生以来初めて、都道府県知事選で自民党が自前候補を立てず、民主党の色がしっかりついた「敵」の現職候補に抱くつくという、事実上の“不戦敗”を決め込んだからだ。

 7月13日投開票の滋賀県知事選で自民党が公明党とともに推薦した候補が敗れた。今後注目される秋の福島、沖縄両県知事選でも自民党の勝利は極めて厳しいとみられており、多くの永田町関係者やメディアは判で押したように「自民党が3連敗の可能性あり」と、したり顔で指摘している。

 しかし突き詰めれば、今回の長野県知事選を含めて自民党は3連敗ならぬ「4連敗」を喫する危機に直面しているのである。「滋賀ショック」を引きずるなかで同党が“不戦敗”に頼った長野県知事選の現実を見過ごしてはならない。

 任期満了に伴う長野県知事選は7月24日に告示され、いずれも無所属で、再選を目指す現職の阿部守一氏(53)と、新人で信州大名誉教授の野口俊邦氏(71)、同じく新人で会社社長の根上隆氏(64)−の3人の戦いとなった。

 阿部氏の1期4年に審判を下す真夏の選挙戦だが、阿部氏にしてみれば民主、自民両党の「相乗り」で支援を仰げば何も怖いものはない。すでに投開票を待たずして「勝負あった」の情勢だ。

 なぜ、こうした無風状態の選挙構図になったのか。

 前回平成22年の長野県知事選では民主党が主導して元総務官僚で元副知事の阿部氏を擁立し、社民党とともに推薦した。自民、公明両党の支援候補との事実上の一騎打ちとなり、5021票の僅差で阿部氏が勝利した。

 むろん今回の知事選で自民党は当初、事実上の「民主党知事」である阿部氏への対抗馬を擁立する方向で動いていた。しかし結局、各種世論調査で時に「80%超」とされる県民の高支持率を維持している阿部氏と手を組むしかないとの判断に傾き、春先には独自候補擁立断念の白旗を掲げざるを得なくなった。

 そして自民党は善後策として阿部氏の推薦を決めた。いわば「昨日の敵」についたのである。うがった見方をすれば、主戦論を貫き通せば敗北は不可避であり、目に見える「1敗」を覆い隠すために弥縫(びほう)策として今回の戦略をとったといえなくもない。

 自民、自民両党の選対事務局によれば、都道府県知事選で同党推薦候補が民主党の推薦候補に敗れた挙げ句、次回知事選にその現職を民主党に追随して推薦するのは民主党発足後、初めてのケースだという。つまり「異例中の異例」の措置なのだ。

 政令市長選では「長野県知事選方式」が1度だけあった。21年8月の横浜市長選で民主党推薦の林文子氏が当選し、自民党推薦候補が落選した。だが昨年8月の同市長選では自民党も林氏を推して再選に一役買った。

 長野県は、24年の前回衆院選に出馬せず政界から引退した羽田孜元首相(元民主党最高顧問)の隠然たる影響力が残る「羽田王国」である。民主党関係者はこう解説する。

 「羽田氏の影響力があるがゆえに県知事選では、自民党が『勝てる候補』を擁立しにくい半面、もともと自民党出身の羽田氏のお陰で民主、自民両党が比較的手を組みやすい政治状況、環境にある」

 伏線もあった。昨年10月の長野市長選で民主、自民両党が共闘のうえ勝利したのだった。

 とはいえ、中央で「1強時代」を謳歌する自民党が知事選で事実上の不戦敗を選択するとは、「まさか」の“事件”である。

 安倍晋三首相(自民党総裁)はじめ党執行部メンバーは6月16日、衆院の党幹事長室に勢揃いし、わざわざ長野から招いた阿部氏に知事選の推薦証を直接手渡した。中央では角を突き合わせている民主、自民両党がいま、長野の合同選対本部で呉越同舟だ。「昨日の敵は今日の友」というだけで済ませられない異様な光景である。

 「4連敗」への危機を生む端緒となった先の滋賀県知事選は、自民党にとっては落とせない戦いだった。

 陣頭指揮をとる石破茂幹事長は告示直前の副幹事長会議などで、民主党が敗北した長崎県知事選の「逆トラウマ」に触れ、「当時(民主の)おごり高ぶった姿勢が見えた。地方選挙や知事選で国全体が流れを変えるのはよくあることだ」とこぶしを振り上げ、組織を引き締めに躍起となった。

 民主党政権時代、つまり自民党の野党時代の22年2月の長崎県知事選では、自公両党が支援した前副知事が民主党などの推薦候補を破った。前年10月に行われた、民主党政権発足直後の参院神奈川、静岡両補欠選挙では民主党公認候補が勝利していた。だが長崎知事選の敗北で潮目が変わり、民主党はその後の選挙で負け続けた。政権交代への契機となったといわれる。

 自民党はそれを教訓として滋賀決戦を福島(10月26日投開票)、沖縄(11月16日投開票)につながる3大知事選の最初の選挙と位置付けていたが、つまづいてしまった。

 自民党にとっては、長野県知事選は「勝負や政局に関係ない」ということらしいが、民主党幹部の言葉を借りれば「たかが長野、されど長野」である。

 滋賀県知事選での自民党の敗因については「集団的自衛権行使容認の閣議決定」「東京都議会のセクハラやじ問題」「候補者の資質」などが影響したと解説する向きが強いが、ここでは敢えて触れない。

 しかし滋賀以上に厳しい知事選がきびすを接して控えるなか、自民党が「4連敗」を回避する道筋はおぼろげだ。

 高値安定の内閣支持率もここにきて下落傾向が顕著となり、ふがいない野党に助けられての「自民党1強」の構図にも陰りが見え始めている。順風満帆だった安倍政権に対する国民の意識が徐々に変わっていることは間違いない。

 ともあれ筆者は、衆院解散は来年9月の総裁選前しかないとみている。通常国会は延長せず、6月末で閉じて再改造して解散という流れだ。

 秋の臨時国会で首班指名し、指名された首相を「総裁選で代えろ」という話にはならない。事実上の「総裁選潰し」であり、来年10月に予定されている消費税率の再引き上げ前に衆院選を済ませるのが選挙戦略としてかなう。集団的自衛権の行使容認について国民の信を問うと訴えて解散すれば、残りの法案はスムーズに通るだろう。

 「春の統一地方選はボロ負けしない限り、勝ったか負けたかよくわからないから、結果はあまり重視していない」

 自民党幹部はそう語るが、秋の重要な知事選をごとごとく落とすとなれば、局面は変わりかねない。とにかく来夏まで安倍首相が解散を打てる体力を維持できるかどうかだが、長野県知事選での不戦敗は「潮目の変化」を暗示している。

(政治部編集委員)

 

注目情報(PR)

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

毎日25分からのオンライン英会話。スカイプを使った1対1のレッスンが月5980円です。《体験無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。