「オフセット取引」は国主導で 装備品輸入国が輸出国に見返り提示

2014.08.19


海上自衛隊の救難飛行艇US2【拡大】

 装備品輸出の難しさの決定打と言ってもいいことを、これまで書いていなかったことに気付いたので、触れておきたい。

 それは、識者や専門家の間ではかねて問題視されていたが、なぜか目立って取り上げられない「オフセット」取引である。「オフセット」とは、装備品などを輸入する国が輸出国に対して、何らかの見返り条件を提示することである。

 これには、航空機を買うのでその代わり農産物を買ってほしいという場合もあれば、最終組み立てなどを担わせてもらいたいという形式もある。後者はライセンス国産と同じような考え方だ。

 「日本も要求すべきですよ」

 そんな指摘もある。わが国の場合、諸外国のようにオフセットという概念がないため、これまで「飛行機を買うのでコメを買って」とか、「国内の雇用を約束して」などという条件を出すことはなかった。それゆえに、あまりピンと来ないのかもしれないが、各国はしっかりとオフセットのルールを確立している。

 例えば、海上自衛隊で活躍する救難飛行艇US2をインドに輸出する話でも、そもそもインドの国防調達では最低限30%のオフセット(現地製造移管)が義務付けられているのである。しかし、現地には十分な製造能力がないなど、この数字の達成には課題が山積している。

 オフセットの規模や内容の変更など要件緩和を求める必要があるだろうが、これはもはや民間企業が行う範疇(はんちゅう)ではなく、政府間交渉のレベルである。

 これまでUS2の製造メーカー「新明和工業」が半ば手探りで奮闘してきているが、繰り返し述べているように、速やかに国家プロジェクト化しなければ機を逸してしまいかねない。

 また、前回までパリで行われた兵器などの展示会について紹介したが、各企業が戸惑っていたことの1つに、ブースにやって来る外国人の情報がないまま、接触していいのかということがあった。

 「今後、情報収集は誰がやるんでしょう…」

 それはもちろん各自で行ってくださいということでは、これまた大変だ。インターネットで調べればOKなどというはずがない。取引をするなら相手国に足を運び、商習慣、政治情勢、経済状況、国民性に至るまで知る必要がある。

 ここは商社のインテリジェンスを発揮してもらいたいが、商社が介在できない国もあるといい、新設が予定されている装備庁に期待したいところだ。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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