自衛隊を支える民間企業の知られざる苦労

2014.08.26


陸上自衛隊の総合火力演習【拡大】

 8月末といえば、陸上自衛隊の総合火力演習である。今年は24日(日曜)に行われたが、1週間ほど前から予行演習が行われるため、関係者の緊張感はそれだけ続く。

 「この時期はずっと泊まり込みですよ」

 関係者とは自衛官だけではない。装備品に携わる防衛産業の人々も、御殿場近辺に集まり、何かあったときに備えて期間中は待機しているのだ。

 とはいえ、これは別に自衛隊側から頼んでいるわけではないし、当然、お金をもらってやっていることではない。いわば、各社「勝手に来ている」ようなものなのだ。

 しかし、「20年モノ」も珍しくない自衛隊装備の場合、故障などはけっこう発生しがちだ。

 そんなことが起きたときに、すぐに飛んでいく態勢をとるのは日本の企業の場合、決して珍しくはない。自衛隊は自己完結組織であり、ある程度は自分たちでケアできるが、部品を換えたり、大きな修理となれば企業の力は不可欠だ。

 かつて北朝鮮のミサイル対処で、各地にPAC3を展開した際、ある国会議員が視察に行って驚いたことの1つに、企業から来た技術者の立ち入りが制限されていたことがある。

 保全レベルの高いエリアのため民間人は入れないという原則はあるが、システムダウンするようなことが起きた場合、企業のエンジニアがいなければ太刀打ちできない。

 そんな、分かり切っていることでも「規則だから」と有事を見据えた措置を怠ってきたのが、これまでの日本の姿だった。民間企業の技術者たちは、それでも支援のため現場に集結していた。

 「目立たないように作業着を作り替えました」

 ある企業の作業着には社名が背中に印字されていたが、「自衛隊に迷惑をかけてはいけない」と、急きょ、わざわざ消したのだという。ある技術者は子供の卒業式をすっぽかすことになった。ある者は家族旅行をキャンセルし…。

 こうした事情は自衛隊と何ら変わらないのだが、彼らと自衛官の大きな違いは「民間人」ということだ。ここには安全保障上の大きな課題が横たわっているのである。

 民間ならではといえば、ある企業は労働組合からストップをかけられ、担当者が必死で説得したという。これらは、防衛省・自衛隊にも見えてこない社内事情であり、国民もなかなか知り得ない舞台裏だ。

 こうしたことを書くと、企業をヨイショしているというご批判もあるようだが、これは紛れもない事実なのである。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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