装備品「まとめ買い」の不安 海自はP1哨戒機20機を一括調達

2014.09.09


海上自衛隊のP1哨戒機【拡大】

 夏が終わると来年度予算の概算要求、こんなことに四季を感じてしまうのは悲しい性。防衛省・自衛隊でも予算の概要が出てきた。

 島嶼(とうしょ)防衛に向け防衛力を強化しなければならないことに対し、国民からはさすがに一定のコンセンサスは得られているものと思われる(普通にニュースに触れている常識的な感覚であれば)。だが、防衛費がうなぎ上りに増えるわけではなく、防衛省としては高性能化・高価格化している装備品を、いかに効率的に調達するかが大命題となっている。

 そこで今、進めようとしているのが長期契約だ。

 これは分かりやすく表現すれば、「まとめ買い」の「後払い」だ。今回は海上自衛隊のP1哨戒機20機を一括調達するもので、これは毎年5機ずつ購入する場合に比べて約403億円のコスト削減になるという。

 また、これまでは財政法により5年契約が上限であったものを、さらなる長期契約を検討することも盛り込まれている。

 これが実現すれば企業としては、毎回、契約を結び直す労力を省くことができ、次の確約がない中で設備投資や材料の調達をするという従来の不安定な状態から解放される。企業内のルールも厳格化されている昨今、もはや「お付き合い」感覚で経費を捻出することは許されなくなった背景もあるだろう。

 さらなる長期契約が可能になれば、企業としても部品・材料をまとめ買いすることができ、その結果、防衛省としてもコストの削減になる。しかし、実は企業側の不安は残っている。

 「予見性が高まることはありがたいですが、実際、将来の物価変動は分かりません」

 予想を超える経費率の変動があった場合はどうするのか、そのあたりも考慮されなければ、企業は大損をする危険性をはらんでいるのだ。

 また、部品などを大量にプールしてもらえれば自衛隊は助かるが、企業にとっては大きな負担となることは言うまでもない。

 そして、自衛隊にとっての問題は、ローンで買い物をすれば家計を圧迫するのと同じで、後年度負担が今後の防衛費を硬直化させることである。現状でも新規の買い物は予算の2割程度しかない。

 コスト削減のために知恵を絞った策が国民の安全を損なっては元も子もない。世論も気にしなければならない装備行政は非常に難しいものだが、将来の人々が困るバトンを渡さないように、一層の目配りが必要となりそうだ。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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