過大請求「再発防止策強化」の意味

2014.09.24


東京・市ヶ谷の防衛省【拡大】

 「えっ? いますぐに? これから大事な会議があるのは知っているだろう?」

 防衛関連企業のAさんが羽田から九州の空港に着き、携帯電話の電源を入れると、会社から「至急連絡されたし」とのメールと伝言。何事が起きたかと慌てて電話をすると、部下がとにかく戻ってきてほしいという。

 聞けば「臨時制度調査」と呼ばれる防衛省による防衛産業への立ち入り検査が予告なしで始まっていたのだ。大勢の人が会社に来ているため、上司不在では対応しきれなくなっていた。Aさんは、その日の予定もホテルもすべてキャンセルし、そのまま出発ロビーに移動して羽田に引き返した。

 2012年以降に相次いで起きた、いわゆる「過大請求事案」を受けて、防衛省は企業に対する抜き打ち調査を実施するなど、従来に増して厳しい措置を講じることになった。企業の作業員などから事前の調整なく直接、話を聞くなどもあるという。

 かねてから存在した「資料の信頼性確保に関する特約条項」が、「資料の信頼性確保及び制度調査の実施に関する特約条項」に変更された。これにより、あらかじめ通知して契約相手の任意の協力の下に実施されていた従来の制度調査だけではなく、抜き打ちで実施する「臨時制度調査」も行うことになったのだ。

 「過大請求」がなぜ起きるかについては、この連載で繰り返し述べている。原価計算などの方法にも状況に応じて見直すべき点があることは、官民関わらず広く認識されていると言っていい。つまり、かかったコストがきちんと認めてもらえないなど、制度そのものに不備があることは装備調達に関係した人であれば、誰もが知っていることである。

 だからこそ、「再発防止」策はそうした企業の立場も鑑み、根本的な改善がなされるべきだったのだが、締め付けが一層厳しくなっただけと言わざるを得ない。

 一方、会計検査院はこの度、防衛産業12社に対して検査を実施した結果、「防衛省の再発防衛策は徹底されていない」と指摘し、国会に報告した。

 「過大請求が行われる懸念が潜在する」と、厳しいルールを作った防衛省に対し、さらに厳しく指導したのだ。その内容を見ると、企業が「作業を口頭で指示した」ことや、「作業指示の資料を記録・保存していない」などと記されている。

 言葉だけでは分かり難いが、これらはどういうことなのだろうか。本当に不正につながるような行為なのだろうか…。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

注目情報(PR)

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。