防衛装備品「使う側」と「作る側」で揺れる信頼関係

2014.10.07


東京・市ヶ谷の防衛省【拡大】

 どう見ても理不尽にしか思えないような、防衛装備品調達の仕組みであるが、「企業が文句を言わずに、唯々諾々と受け入れている(ように見える)ことにも問題がある」という指摘もある。

 それには、さまざまな要因が考えられる。実務的な側面としては、官需という、いわば取りっぱぐれのない事業であることから、低利でも継続する価値はあること。中小企業にとっては銀行から融資を受けやすくなる…などだ。

 もう1つの面は「国のため…」と言えば、嘲笑したり否定する人も多いので、もう少し突き詰めれば、国のために働く「誰かのため」だと言えるのかもしれない。

 「自衛官が命を預ける装備品を、われわれは作っているんです」

 今、連日テレビに映し出される御嶽山での救助活動からも、こうした任務がどれほど危険と隣り合わせであるかが分かる。装備を使う側と作る側も信頼関係がなければとても成し得ない。

 防衛産業と自衛隊は、ユーザーとメーカーである以前に戦友なのだ。企業はいつでも防衛事業から手を引くことはできるが、それをしないのは、「良い物を作ります」と交わした男と男の約束が頭をよぎるからだ。

 事業担当者は、その信頼関係を作業者との間にも築かなくてはならない。

 「お引き取りください」

 ある会社では、いきなり調査にやってきた防衛省の担当者を、そう押し返したことがあるという。民間企業があり得ない態度だと怒り心頭に発した様子だったというが、ひるまずに言った。

 「後ろめたいことは一切ありません。いつでも調査を受けることはできます。しかし、このようなやり方では従業員が動揺してしまいます」

 みんな純粋な思いで一生懸命やっている。それなのに家宅捜索でもするような勢いで来られては、自分たちの仕事に何か後ろめたいことでもあったかと不安になるだろう。小刻みに震えている従業員も目に入った。

 自衛隊に対する責任感、またそれを担っている誇りを頼りにやっている防衛装備品作りの現場、そこで作業にあたる人やその家族に今、動揺が広がっているのである。

 税金が不正に使われることはあってはならない。しかし、「信頼性条項」とは一体、何なのか。これが真の信頼関係を脅かすことになれば元も子もないだろう。外国企業が防衛産業の合併をもくろんでいるという噂もあるなかで、空疎になりつつある官民関係が非常に心配だ。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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