戦闘糧食「缶メシ」強度、寸法、印字法…厳しい条件で製造

2014.10.21


被災地で活動する自衛官。彼らの活動を支える「缶めし」には、細かい規定が定められている【拡大】

 おそらく防衛産業にスポットライトをあてた連載は他にないのではないか、と自負してきたこの『ニッポンの防衛産業』も残すところ、あと2回となった。今回は誰にも身近なものである食べ物を取り上げたい。

 東日本大震災で自衛隊の災害派遣が始まったころの話である。避難所などである問題が発生した。その原因は「赤飯」だった。

 「赤飯を出すな!」

 そんな指示が上層部から出されたということで、ちょっとした混乱が起きたのだ。

 自衛隊の戦闘糧食である缶詰、いわゆる「缶めし」の中でも赤飯は腹持ちが良く、ハードな活動をする隊員にとってはありがたいものと考えられていた。しかし、これまで災害派遣に出た際、何度か被災者に配ったところ、思いがけない反応をされたのだ。

 「こんな時に赤飯とは何事だ!」

 配った方も悪気があるわけではない。これで少しでも元気になってもらおうとしたにもかかわらず、お叱りを受けてしまったのだ。

 こうした経緯があり、陸海空自衛隊の中でも陸自はその後、赤飯の缶詰を廃止する決断をしたということで、賛否両論を生んだ。

 「缶めしは配るためにあるのか?」

 もちろん答えはNOであるが、現実的には今後も災害時に被災者が手にする場面は十分想定し得る。それを考えれば、言われなくてもいい批判を避けるため、赤飯ではない別のもので、かつ厳しい訓練などで隊員がおなかを満たすことのできるものに代えようということになったのだ。

 その是非はさておき、自衛隊の缶詰製造現場を見てみると、民生品とは全く違う意識が働いていることが分かる。

 「自衛隊仕様をクリアするには、どうしても味は二の次になってしまいます」

 米はその年のものを使用するなど、食材の規定も厳しいが、それは安全性を考えてのことだろう。むしろ大事になるのは強度など自衛隊ならではの基準だ。

 空中投下も想定されることから落下試験は不可欠で、それもマイナス30度で1日中かけて実施するなど、あらゆる条件を試す。すべては隊員の行動に合わせられているのだ。

 その他、缶の寸法や印字方法、桜マークの大きさ、さらに缶を入れる段ボールまで細部に渡って定められている。製造企業はそのすべての条件を満たさねばならないのだ。 

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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