救難非常食に激励の言葉「ガンバレ!元気を出せ!」 作る側、使う人との絆

2014.10.28


御嶽山の山頂付近の山小屋で、救助活動をする自衛隊員ら(本社ヘリから)【拡大】

 最終回は、先週に続いて自衛隊の缶めしを取り上げたい。

 自衛隊の缶詰は、よく見ると缶切りを入れる部分は、隊の標準色であるOD(オーデー=オリーブドラブ)色に塗られていない。それは缶の中に塗料が入らないようにだという。

 とにかく、ここまで細かければ簡単にマネはできないだろう。また、自衛隊のためだけに、これだけ面倒な仕事を引き受けられる会社はそう多くはないはずだ。

 さて、このように自衛隊の過酷な試験に合格させるために神経を配る製造企業であるが、ある時、自衛官によるアンケートを見てショックを受けた。

 「缶詰をプルトップにしてほしい!」

 いまどきの若い隊員は缶切りも使えないのかと、先輩たちから怒られそうであるが、これが現実だ。他にも、味やらメニューやら、糧食という個人の嗜好(しこう)もかかわるものだけに要望をくめば切りがないが、何より自衛隊での所要を満たすことが第一なのである。

 ちなみに、寒冷地や高温下、さまざまな想定での空中投下試験など、強度にこだわっている缶めしに、プルトップ式はあり得ない。

 とはいえ、実はメーカーはこの難しい仕様を満たしながら、見えない努力をしている側面もある。再び、前回紹介した赤飯の話に戻る。

 「赤飯を、さあ食べようと開けたときに量が減っているという現象が起きたのです」

 もちろん、厳格に量られているご飯が減るはずはない。缶めしはアルファ化といって、乾燥させた状態になっている。このため、湯煎(ゆせん)で戻した際にへこんでいるものと膨らんでいるものができてしまい、「分量が違うじゃないか」と勘違いされる恐れがあるという。なるべくそうならないように、良質の米と小豆を全国から探し出したのだ。

 これは仕様書に定められていることではないが、極限状態での訓練や活動において戦う者たちの心情に細やかに配慮しているのである。

 そういえば、航空機などに備えられている救難非常食に「激励の言葉」が印字されているところにも、作る側、使う人との絆を感じる。

 「ガンバレ! 元気を出せ! 救助は必ずやって来る!」

 誰が手にするのかは分からない。しかし、その誰かのために防衛産業は心血を注ぐ。そして、それを使って自衛隊も全力を尽くすのだ。

 「ガンバレ! 元気を出せ!」

 企業と自衛隊が心通わせることは「悪」ではなく、国力にほかならないのである。これからも恐れずに前進してほしい。 =おわり

 【お知らせ】 桜林美佐さんの新連載「国防最前線」(火曜掲載)が、11月4日発行号からスタートします。ご期待ください。

 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。

 

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