一方、水沢駅近くでの小沢氏の演説直後、2駅離れたJR前沢駅付近では自民党の藤原氏の演説会が開かれていた。
「藤原さんは31歳ですよ。あと20年、30年、いやあと40年、皆さんとともに歩めるんです!」
応援に駆けつけた大島理森前副総裁は、今年72歳を迎えた小沢氏を念頭に、藤原氏の「若さ」を聴衆に訴えた。応援演説に立った県議も「藤原氏は選挙のときだけ帰ってくる方とは違う」と声を張り上げた。
ただ、人の集まりはお世辞にもいいとは言えない。ざっと見たところ40人程度だ。小沢氏の場合は、市街地で百数十人、山間部でも70〜90人を集めていた。「父親の代から応援しているよ」「久しぶりだなぁ」と笑顔で小沢氏の肩をたたく高齢者らの姿は、「王国」の底力を感じさせる。
しかし、地盤沈下は確実に進んでいるという。奥州市幹部が解説する。
「かつては小沢氏寄りだった県議の一部が、藤原氏支援に回っている。地元経済界にも藤原氏を推す動きがある。今回の地元遊説は、小沢氏の焦りの表れだろう」
藤原氏は12年衆院選で小沢氏に敗れたものの、約3万票差まで詰め寄り比例復活で初当選した。小沢氏の得票は7万8057票で、09年の13万3978票から4割以上減った。永田町では「比例復活を許した時点で、『選挙の小沢』の虚像は崩れた」(民主党中堅)との見方がもっぱらだ。
藤原陣営関係者は「今回は接戦に持ち込める。何が何でも(藤原氏を)比例復活でなく選挙区で勝たせる。岩手を変えるための象徴区が4区だ」と鼻息は荒い。9日の安倍首相の4区入りを起爆剤に、一気に攻勢をかける構えだ。
「剛腕」の異名をかけた崖っぷちの戦いが天王山を迎える。 (松本学)