豊洲新市場の移転問題をめぐり、小池百合子都知事と、石原慎太郎元都知事がバトルを繰り広げている。小池氏が「(石原氏の記者会見は)無責任な内容だった」と切り捨てると、石原氏は、小池氏への住民監査請求や住民訴訟を起こす可能性を文書で示唆した。さまざまな見方があるなか、ジャーナリストの有本香氏が緊急寄稿した。
つい「豊洲問題」と言ってしまうが、本当は豊洲市場に問題はない。
私は徹底取材したが、安全面はもちろん、石原知事時代の土地購入を含む、移転の経緯と決裁、手続きに瑕疵(かし)はない。調べれば調べるほど、石原氏は遅々としていた案件を前進させた功労者としか思えない。
その過程で「不正ないい思いをした者」がいたのなら、都は証拠を添えて刑事告発すればいい。そうであっても、完成した施設を空き家にしておく理由にはならない。
一方、小池氏はどうだろう。20年にわたって多くの都職員が尽力し、専門家が知見を寄せ、都議会の承認も得た末に、石原氏が決断(裁可)したプロジェクトを、自らの「感性」で止めた。
誤解している人が多いが、この延期は小池氏の選挙公約に明記されていない。重要な「延期」を決める際、議会に諮ることすらしなかった。つまり独断したのだ。小池氏のガバナンスには大いに問題がある。
石原氏を「無責任」とたたいたメディアは不思議と、この小池氏の独断、独裁性をまったく問題にしない。