【スポーツ随想】稽古の在り方に問題か けが人続出の大相撲、北の富士さんも苦言「大きくなりすぎた上、横着して…」

秋場所は初日から満員御礼となったが、内容は明らかに劣化していた

 史上まれにみる低レベルな場所に終わった秋場所から1週間余り。大相撲は2日に明治神宮奉納土俵入り・全日本力士選士権を行い、5日の千葉県八千代市を皮切りに22日間の秋巡業に出る。

 秋場所を休場した3横綱2大関のうち、稀勢の里、鶴竜は最初から参加する。白鵬は明治神宮土俵入りと4日の「大相撲beyond2020場所」(国技館)は顔を出すが、5日以降は不透明だ。大関照ノ富士は休場し、肉離れを起こした高安は「やっと歩けるようになった」とかで巡業どころではないらしい。

 他にも、右膝じん帯を痛め手術の可能性がある宇良ら、8月の夏巡業同様休場者が多い。

 一時は最多で7人も休場した秋場所では、けが人続出に「夏巡業が長過ぎ体をケアするひまがなかった」との声が力士から聞かれた。もっともらしいが、今夏の巡業は23日間で若貴人気全盛時代の平成4年の31日間に比べ特に過密でもない。

 「相撲にシーズンオフがないことはわかっているはず。巡業は本場所と並ぶ協会の二本柱であり、しっかり勤めるのは力士の義務。個人個人で考え、けがと向き合うしかない」と自覚を促す親方の声も聞いた。

 巡業日数よりも、稽古の在り方に問題があるのではないか。NHKの解説でおなじみの元横綱、北の富士勝昭さんはこういった。「オレなんか130キロちょっとだったのに、幕内の平均体重が160キロを超えた。みんな大きくなりすぎた上、横着してぶつかり稽古で転ばなくなったからね」

 受け手の胸をめがけて当たって転がるぶつかり稽古は、けが防止のため柔道で基本となる受け身と同じで大切だ。昔は全身砂だらけで何度も転がったが、いまは当たるだけ当たり最後に一度転がる程度。「転ぶのに慣れてないからけがしやすい。不可抗力といえないけがも増えたのではないか」と北の富士さん。

 ぶつかりだけでなく、四股やすり足などの基本でみっちり汗を流す力士も減り、稽古の番数もめっきり少なくなった。

 秋場所の前売りは発売から50分で15日分が完売したが、はじめから転売目的の購入も多かったようで転売サイトでは定価を下回る値崩れ現象も起きたという。

 2階席の空席は期日までに転売できなかったようだ。黙っていてもお客がくる異常なほどの人気の基盤は意外にもろいのかもしれない。答えは一つ。商品である「土俵」の充実に、力士の意識改革が必要だ。(作家・神谷光男)

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