大谷「4番・ピッチャー」はメジャーで許されるか 獲得の決め手は二刀流の受け入れ態勢

投げては完封(写真)。打っては4回に中前打でチャンスメーク。大谷はもはや漫画の世界さえも超えている

 今オフにポスティングシステムを利用し米大リーグに移籍することが確実視される日本ハムの大谷翔平投手(23)は、本拠地最終戦となる4日のオリックス戦(札幌ドーム)にパ・リーグ史上初の「4番・投手」で先発。投げては最速162キロをマークし、2安打10奪三振完封で3勝目(2敗)を挙げ、打っては4打数1安打で先制のホームを踏んだ。こうなると、“メジャーでも二刀流”に半信半疑だったチームも真剣に検討しないわけにいかない。カネが決め手にならない大谷争奪戦は、二刀流をどのような形で受け入れるかがポイントになりそうだ。(片岡将)

 試合前のスタメン発表で「4番・ピッチャー、大谷」がコールされると場内は騒然となった。国内ラスト登板となることが確実な状況。さらに2リーグ制以降で「4番・投手」での先発は、1951年10月7日の阪神・藤村富美男(大洋戦)以来66年ぶりで、パでは初とくれば、ファンが熱狂するのも無理はない。

 「100を目指したらまだまだだけど、思うように体が動かない中でもゲームを作れたし、完封できたことはよかった」

 リーグ優勝を決めた昨年9月28日の西武戦(西武プリンスドーム)以来となる完封勝利にも、表情を崩さない。花巻東高時代以来となる4番投手での先発に「打順が変わっても、自分がやることは変わらない」と淡々としていたあたりも大谷らしい。

 “リアル二刀流”の完成形は、ネット裏に詰めかけた12球団18人のメジャースカウトにも衝撃を与えた。

 そのうちの1人、ドジャースのアレックス・アンソポウロス球団副社長(40)は「日本の球団に敬意を払っているので、特定の選手に関してコメントすることは控えたい」とした上で「2000年代の前半には、投手と外野をこなしたブルックス・キーシュニック(ブルワーズなど)という選手がいたが、彼も基本的に投手としてはスポット的な起用だった。あくまで一般論として聞いてほしいが、投打をシーズン通して高いレベルでこなせるのなら、それは登録枠に素晴らしい影響を及ぼすことになるし、できる可能性があるなら追求していくべきだ」と二刀流起用の可能性を探る姿勢をみせた。

 一方、大谷は自身の去就について沈黙を貫いているが、獲得に強い興味を示しているヤンキースの地元紙ニューヨークポストは3日(日本時間4日)、「日本の二刀流スターは大リーグで何をしたいのかがミステリーだ」と報じた。

 筆者のジョエル・シャーマン記者は「(大リーグの新労使協定で)大谷は25歳まで待たないと完全なフリーエージェントとしての契約を結ぶことができないので、当初は年俸30万ドル(3300万円)から数万ドル(数億円)程度の契約しかできない。大きな才能と安い値段という組み合わせに、ほとんどのチームが興味を持ち、ヤンキースなどは非常に高い興味を持っている。しかし、大谷はチームに何を求めているのかを明らかにしていない。例えば、ア・リーグのチームに『DHでの出場と5日に1回の先発登板』の確約を希望しているのだろうか?」と問いかけている。

 その点、大谷は2015年末に夕刊フジのインタビューに応じた際、メジャーでの二刀流についてこう述べている。

 「二刀流をやってる以上はそこで評価をしてもらえればすごくうれしい。でも、日本ハムに来るときもそうでしたが、『行きたい』とか『やりたい』というだけでは通らない。日本ハムのように二刀流で使いたいと思ってくれる球団や、続けられる環境があって初めて成り立つことなんです。(中略)僕は受け身の立場。持っている技術を結果で提供していって、それを見込んでもらうという感覚ですね」

 いま、大谷は大リーグに対して完全な“売り手”の立場だ。プロ5年間で磨き上げた才能と技術を、メジャー側は間違いなく必要としている。

 となれば、かつて高校卒業即メジャー挑戦を決意していた大谷に対し、日本ハムが「二刀流」を提案して翻意させたように、今度はメジャー各球団がどこまで二刀流と真剣に向き合い、どんな受け入れ態勢を用意できるかが、大谷獲得の決め手になりそうだ。

 DH制のア・リーグでは複数の球団が、先発ローテーションを増員し、これまでの「週1回の先発登板と、その間に3-4試合のDH出場」というサイクルに近い形を提供することを検討中だ。

 DHのないナ・リーグ球団は一考を要する。先発登板間に一塁や外野で出場するプラン、さらには野手で先発し、試合終盤にリリーフ専門でマウンドに上がる可能性も検討されているという。ちなみにリリーフでの起用は、大谷の新人時代に栗山英樹監督(55)も模索していた。

 大谷を狙うメジャー球団は、野球の本場でもいまだかつて見たことのないタイプの選手を前に、その扱い方に頭を悩ませることになる。

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