【元巨人 クロマティが斬る】日米野球を続ける意味は何なのか? “休暇気分”で真剣なMLB選手は1人もいなく…

記念撮影を行ったMLBオールスターチーム  =11月7日東京ドーム

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 11月に行われた日米野球では、侍ジャパンがMLB(米大リーグ)オールスターチームを5勝1敗と圧倒した。私の感想を話してみたい。

 日本はよかった。基本に忠実な野球をし、試合に対する情熱が読み取れた。一方、アメリカチームはバケーション気分。試合になってもその気分が抜けなかった。「game face」(真剣な顔つき)をした選手は1人もいなかった。しかも、アメリカはベストの選手が集まったわけではなかった。

 ブライス・ハーパー、マックス・シャーザー(以上ナショナルズ)、JDマルティネス、クリス・セール、デビッド・プライス(以上レッドソックス)ら超一流は来なかった。ナ・リーグMVPのクリスチャン・イエリッチ(ブルワーズ)、48本塁打のクリス・デービス(アスレチックス)もいなかった。

 日本も巨人のエースで2年連続沢村賞の菅野智之、菊池雄星(西武)、筒香嘉智(DeNA)、青木宣親(ヤクルト)の名前がなかったが、総じてオールスター級を並べたといえる。

 だが、MLBでオールスター級はフアン・ソト(ナショナルズ)、ロナルド・アクーニャ(ブレーブス)くらい。ヤディア・モリーナ捕手(カージナルス)もいたか…。

 それでもよくよく観察していくと、日米の野球には大きな違いがあった。アメリカの方がテンポが速かった。ここ数年、メジャーの野球は進行の遅さを指摘されてきたが、試合のテンポ、リズム、タイミングはすべてMLBが上だった。

 アメリカの投手が打者にチャレンジしていたのに対し、日本の投手は3-2のフルカウントに持ち込むシーンが目立った。アメリカの投手が速球で押すのに対し、日本の投手は変化球主体。アメリカの打者は全力でバットを振り、アメリカの投手の速球の方が日本の投手の速球より生きた球が多かった。

 今季47本塁打を放ち西武を10年ぶりのパ・リーグ優勝に導いた山川穂高内野手(27)は、メジャーのスピードにてこずり、1歩腰が引けた印象だった。一方、ソトは東京ドームの天井を直撃する大飛球を2発も放ちパワーを見せつけた。

 時代は変わった。私の知るオールスターチームは文字通りスターの集まりで、全盛期のバリー・ボンズ、ランディ・ジョンソン、ケン・グリフィー・ジュニアがいた。メジャーの選手はいま、とてつもない報酬を受け取っている。日米野球出場の報酬は10万ドル(約1130万円)で、年間数百万ドルを稼ぐメジャーリーガーにとっては意味のない額だ。親善と日本観光以外に特典がない。

 日本に来る意味が希薄なのだ。

 日米野球は双方の最高のプレーヤーが、どこまで素晴らしいプレーを見せることができるかのテストの場でもあった。だが、そういう意義も消滅した。これ以上日米野球を続ける意味は何か、を改めて考えさせられたシリーズでもあった。

 シリーズのハイライトはむしろ、元ヤンキースの松井秀喜がMLBのコーチとしてコーチャーズボックに立ったことだった。日本のファンはそんな彼をどう見たのだろうか。

 それでも、侍ジャパンはメジャーリーガーが出場しないであろう2020年の東京オリンピックでは、金メダルを取ると思う。日本はモンスター・チームだ。次回はメジャーで通用する日本人選手を探してみたい。(構成ロバート・ホワイティング)

 ■ウォーレン・クロマティ(Warren Cromartie) 1953年9月29日生まれ。米フロリダ州マイアミビーチ出身。大リーグのモントリオール・エクスポズから83年オフに巨人入団。89年に打率・378で首位打者とMVPに輝き、7年間在籍した巨人で球団史上最強の助っ人といわれる。外野席のファンに「バンザイ」を促すパフォーマンスでも有名。左投左打。現在はモントリオールにMLBのチームを呼び戻す運動のリーダー。2年前から東京在住。