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【ぴいぷる】高橋勇市、異変は桜舞う高2の春…壁に頭を打ち付けて泣いた アテネで挙げた金の祝砲は新たな号砲へ (1/4ページ)

 息を吸い、ふぅっと吐き出す。体を前傾させ、踏ん張っていた右足を蹴り、加速する。

 と同時に1、2、3…。数をかぞえて50で一区切り。これで1分、250メートル。また一からかぞえ直し、50を4セット、4分経過で1キロ通過だ。

 こんな具合に計算しながら走りきる。ゴールを過ぎて、実際にかかったタイムと頭の中でかぞえた時間を比べてみると、ほとんど狂いはない。

 「長年やってますから。レースのとき、何を考えているかってよく聞かれますけど、実はね、数をかぞえてるんです」

 時計は見ない。というか見ることができない。光を失って17年が経つ。

 城址公園の数千の桜が春を告げる秋田県横手市に生まれた。異変は桜花が街を覆うそんな時期、高校2年の4月だった。

 「学校の健康診断を受けたら病院に行くように言われて、診てもらうと白点状網膜炎で、いまの医学では治せないと。まだ視力が0・2ぐらいあったので状況が理解できないというか」

 だが、歩けばトラックのサイドミラーに顔をぶつけ、夕方になると側溝に転落。そんなことが次第に増えていく。

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