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【福島良一 メジャーの旅】サイン盗みは「野球の一部」 あの「世界中が耳にしたホームラン」の裏にも…

 レッドソックスの腕時計型端末を使ったサイン盗み騒動。しかし、メジャーでは今に始まったことでない。ロブ・マンフレッド・コミッショナーが「野球の一部」と言うように、昔からこうした不正行為は盛んだった。

 最も有名なのは1951年のジャイアンツ。8月11日時点で首位ドジャースに最大13・5ゲーム差をつけられていたが、奇跡の逆転優勝。ボビー・トムソンの逆転サヨナラ3ランは「世界中が耳にしたホームラン」として語り継がれている。

 だが、それから半世紀後、当時の球団職員の告白をもとに選手たちのサイン盗みが判明。本拠地球場の中堅後方にあるロッカールームから望遠鏡で捕手のサインを盗み、バッターに伝えた。これほど盗むのに適した球場もなかったわけだ。

 60年代はホワイトソックスの控え捕手がトレンチコートと帽子を身にまとい、外野席からバッターに球種を伝達。それ以前には、34年の日米野球で来日した際、国のスパイの任務も担っていたモー・バーグという捕手も在籍していた。何かとスパイ行為に縁があるチームだ。

 70年代にはインディアンスがスコアボードにある先住民マークの目が開けばストレート、閉じればカーブの合図。ブルワーズはマスコットが打者に球種を知らせていた。確かに自軍選手にホームランが出たとき以外は暇を持て余している。

 その後不正行為は減ったかに見えたが、98年にダイヤモンドバックスのビデオ担当者が相手捕手のサインを1球ごとに撮影。99年はまたもやインディアンスが球場の外野スタンドにビデオカメラを設置。サイン盗みの疑惑が次々に噴出した。

 2001-03年には、当時レンジャーズのアレックス・ロドリゲスが相手打者と球種を教え合うスパイ疑惑が浮上。09年にはヤンキースのジョー・ジラルディ監督がレッドソックスのサイン盗みに激怒。すでに伝統の一戦でひと悶着あった。

 今回はレッドソックスの事件に続き、翌日アスレチックスの選手がサイン盗みの疑いで退場となった。不正な伝達行為も時代とともに手法は変われど、野球というゲームの一部に変わりはないようだ。

 ■福島良一(ふくしま・よしかず) 1956年10月3日、千葉県市川市生まれ。1973年高校2年で初渡米して以来、毎年現地で大リーグ観戦。故・伊東一雄氏を師と仰ぎ、大リーグ評論家となる。現在は専門誌などへの執筆や、テレビ、ラジオなどで評論活動を展開、ツイッターでも発信中。主な著書に「大リーグ物語」(講談社現代新書)、「大リーグ雑学ノート1、2」(ダイヤモンド社)、「日本人メジャーリーガー成功の法則 田中将大の挑戦」(双葉新書)などがある。

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