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【桐生9秒98 土江寛裕コーチに聞く】コンビ結成直後に怒鳴り合った桐生&土江コーチ 「なぜ僕を9秒台で走らせると言わない?」 (1/3ページ)

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 陸上の男子100メートルで今月9日に日本人初の9秒台をマークし、新時代の旗手となった桐生祥秀(東洋大学4年)。9秒98の日本新記録樹立までの軌跡を振り返る上で、二人三脚で歩んできた同大学陸上競技部の土江寛裕・短距離部門コーチ(43)の存在を欠かすことはできない。2人の出会いは、桐生が同大学の門をたたいた約3年半前。コンビ結成直後には、人目をはばからず怒鳴り合いを演じたことがあった。(スポーツジャーナリスト・藤江直人)

 大けんかの発端が何だったのかは覚えていない。それでも、近くにいた警備員が驚き思わず振り向くほどの大声で桐生と怒鳴り合った光景は、3年半の時間がたった今でも、土江コーチの脳裏に鮮明に刻まれている。

 「なぜ僕を9秒台で走らせると、コーチは言わないんですか?」

 「根拠がないからだ」

 「ある指導者は僕を9秒台で走らせると言うのに、コーチが言わないのは自信がないからだ!」

 「どうしたいんだ?」

 「僕は五輪で決勝に残りたい。決勝に残ってメダルを取るんです!」

 「分かった。それを目指してやろうよ」

 時は2014年春。日本歴代2位(当時)の10秒01の記録をもつ桐生が京都・洛南高校から入学し、法学部准教授(現教授)と陸上競技部短距離部門のコーチに就任した土江氏と師弟コンビを組んでから、まだわずかな時間しかたっていなかった。

 20歳以上も年が離れた2人が口角泡を飛ばし合った場所は、東京都北区のナショナルトレーニングセンターの正面玄関だった。練習を終えて帰路に就くとき、心の中に募らせていた不満に近い思いを桐生が爆発させた。

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