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【柏英樹の勝負球】若手よ、もっとギラギラしろ!7年ぶり巨人復帰の吉村禎章Cがたたき込む「不屈の精神」 (3/3ページ)

 しかし、舞台は残酷に暗転する。巨人9-1のリードで迎えた8回表。中日・中尾の左中間への打球を左翼・吉村が捕球した瞬間、守備固めに入っていた中堅・栄村が激突。吉村は左膝を抱えて悶絶した。左膝外側靱帯断裂。4番打者どころか、選手生命をも危ぶまれる大ケガとなってしまったのである。

 再起への道は壮絶だった。足の先に神経が通わないから、左足首はだらんとしている。それを特注スパイクで留めて歩くだけでも大変。まして全力で走るとなると…。手術、さらに1年以上のリハビリを経て、翌89年9月2日に復帰。423日ぶりに代打で登場し、ファンを感動させた。

 「リハビリ中には、自分よりもっと体が不自由な方が明るくリハビリに挑んでいるのに励まされました。その方々に比べたら、われわれの努力、練習など大したことはないですよ。若い選手たちに技術はもちろん、レギュラーを取るためにはどんな努力も惜しまない心を植え付けていきたいです」

 吉村の17年の現役生活は、ケガをした後の方が長い。不自由な体で後半の10年間を勤め上げた。晩年引退を申し出た吉村に対し、当時の長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)は「打てなくてもいい。ベンチにいてくれ」と言って引き止めた。

 「巨人が優勝争いの中にいないというのは考えられない。ファンが期待する、若手が躍動する、はつらつとしたチームづくりに力を注いで監督の手助けをしたい」

 リハビリで使ったギプスは今も選手寮に飾られている。そこに記した「不屈」の文字の通り、苦境のチームを復活に導いてくれるはずだ。

 ■吉村禎章(よしむら・さだあき) 1963年4月27日生まれ。奈良県出身。大阪・PL学園高3年春にセンバツ優勝。81年ドラフト3位で外野手として巨人入り。98年限りで引退するまで巨人ひと筋通算1349試合、打率・296、964安打、149本塁打、535打点。巨人コーチ、解説者をへて、このオフから現職。左投左打。

 ■柏英樹(かしわ・ひでき) 1942年東京都生まれ。青学大時代はラグビー部主将。64年に報知新聞社に入社し、巨人担当などを務めた。ONとは41年間親交がある。99年1月からフリー。著書多数。

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