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【高校野球 新・名将列伝】県大会決勝「諦めていた」奇跡の8点差逆転劇 星稜・林和成監督

★星稜・林和成監督(2) 

 甲子園大会ならともかく、地方大会での試合がこれほど話題になることは、かつてなかった。

 翌朝、全国ネットのテレビの情報番組で大きく取り上げられた試合は2014(平成26)年の7月28日。石川県立野球場で行われた石川県大会の決勝。星稜と小松大谷の対戦だった。

 星稜のタクトを振った監督・林和成(42)はこう打ち明ける。「実は、あの試合は早い段階から諦めていたんです。序盤の失点は私のサインミスが原因。私はベンチで後悔ばかりしていた。今年は甲子園に行けなかった…とも考えた」

 0-8とリードされて迎えた9回表。一度降板させていた岩下大輝(現ロッテ)を再びマウンドに立たせたのは「最後はエースで」と考えたからだったが、3者三振に切った岩下がニコニコしながらピョンピョンとベンチに帰ってきた。林は変化に気付く。「あの笑顔からチームのムードが変わった」

 その裏。先頭打者に、レギュラーから外していた主将の村中健哉を代打で起用し四球。さらに安打が続き、相手失策があり、本塁打も出て2点差とした。ここで8番打者が「待て」のサインを無視して一邪飛を打ち上げた。「怒鳴ってやろうかと思った」。諦めていたのが、すっかり勝つ気になっている。

 その8番打者を、ベンチの選手たちが笑顔で迎えたのを見たとき、決意した。「最後まで選手に任せよう」。すると再び快音が響き始める。スクイズのサインも思いとどまった。最後は佐竹海音の打球が左翼手の頭上を越え、サヨナラ。甲子園切符を奪い取った。

 わずか1イニングで8点差をひっくり返した試合で、39歳だった林が監督として得たものは大きかった。「選手たちは自分を信じて戦っていた。私はといえば…。最後まで諦めない、選手を信じることの大切さを、純粋な生徒たちから学んだ。死ぬまで忘れない」(敬称略)

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