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【神谷光男 スポーツ随想】骨の髄まで染みこんだ「無理へんにげんこつ」 相撲界の体質改善、容易でない

 「無理へんにげんこつ」と書いて「兄弟子」と読む、とは昔の相撲界でいわれた言葉だ。むちゃな注文をつけても、弟弟子がいうことをきかなければ、兄弟子が殴るのは当たり前だった。

 稽古場の上がり座敷でお客さんが見ている前でも、素手やほうき、水をつけるのに使うひしゃくなどで新弟子たちが殴られていたものだ。

 つい最近でも、今年春場所に十両だった貴公俊(現千賀ノ浦部屋)が、控えに入るタイミングが遅れたことに腹を立て、衆人環視の支度部屋で付け人を5、6発殴って血まみれにさせた暴力沙汰があった。

 暴力根絶へ向け、昨秋の日馬富士暴行事件を受け2月に発足した日本相撲協会の第三者機関、暴力問題再発防止検討委員会が、力士や親方ら約900人の協会員全員への聞き取りに基づいた最終報告書を先日公表した。

 それによると協会員の5・2%の40-50人が「暴力を受けた」と答えた。また8%が暴力による加害を認めたとか。

 ただ、初めて会った弁護士が相手では力士たちは戸惑いが先に立ち、「はい、殴りました」などと正直に申告するだろうか。調査に費用をかけた割には、出てきた数字は氷山の一角であまり意味がない感じもする。

 検討委の但来敬一委員長は暴力を容認する土壌を指摘し「入門してくる子供たちのためにも根絶してほしい」として、再発防止へ意識改革を進める研修の実施、暴力被害を訴えやすい環境整備などを提言した。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「提言に従い暴力の根絶に取り組む」と宣言したが、骨の髄まで染みこんだ体質の改善は容易なことではないだろう。(作家・神谷光男)

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