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【神谷光男 スポーツ随想】「隔世の感極まれり」高校生トライアウト (1/2ページ)

 「長生きはするもんだねえ」と、古くからの高校野球ファンの知人がしみじみといった。プロ志望者の高校生を対象に、日本野球機構(NPB)と日本高野連が共催で「合同練習会」という名のトライアウトを行うことが決まったという。

 夏の甲子園大会が中止になり、アピールの場を失った高校生にとっての救済措置。地方大会の代わりに開催される各都道府県高野連主催の独自大会は、無観客で行われるためスカウトが入場できるかどうか不透明だった。プロにとっては最後のチェックの場が確保されたことになり、一石二鳥というわけだ。

 日程は8月29-30日、9月5-6日の2度。東西各1カ所で開催の見込みで、人数が多い場合は9月12-13日にも実施されるという。

 知人は続けた。「高校とプロは、不倶戴天の敵のような間柄だったのにトライアウトなんて…。高校生は商品じゃないぞ、と“佐伯天皇”が地下で怒りまくっているかもしれないね」。日本高野連の会長として、不祥事を起こした学校には厳罰で臨み、プロとは厳格な一線を画した故佐伯達夫会長のことだ。

 よりによってそんな厳しい時代の1961年夏、大分高田高の超高校級右腕、門岡信行投手は夏の大会1回戦で敗退すると、帰りのフェリーの中で中日入りを表明してしまった。

 まだ、退部届も出ていない大幅なフライング。春ごろから複数球団の金品攻勢も噂されていて、さあ、佐伯会長が怒るまいことか。なんと、その直後に大分高田に1年間の対外試合禁止を申し渡した。「それはいくら何でもやりすぎ」と人権擁護団体が動き、国会でも取り上げられたが、佐伯会長は頑として譲らずプロ、高校の決定的な断絶に発展した。

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