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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】ダルビッシュを考える(上) アイドル選手と違うオーラ…10種類以上の球種、状況次第で直球の速度も調節 (3/3ページ)

 しかし、準々決勝で右すねに骨膜炎を起こし、全力疾走もおぼつかないまでに至ったがまたしても決勝のマウンドに立つ。逆転を許して東北初の全国制覇には至らず珍しく涙を流したが、肉体が抱える厳しいコンディションと戦いながらマウンドに立ち続けたメンタルの強さにも敬服した。そのダルビッシュがキャプテンとなり最終学年で甲子園に戻ってきた。

 私たち放送に携わる者にとってダルビッシュは楽しみでありながら最も緊張感を覚える非常に難易度の高い投手だった。

 第一が球種の豊富さだ。直球のほかに複数のスライダー、カットファーストボール、カーブ、シュート、シンカー、ツーシーム、チェンジアップ、スプリット、フォークなどその数は10種類以上に及ぶといわれていた。

 ストレートが速いという基本のレベルが高い上に、これを少しずつ変化させるボールが多彩なので明確に識別しようなどということはかなりハードルが高い。ストレートのスピードまでも状況によって調節するとも聞いていた。

 もちろん試合で全球種を使わないだろうが、きっちり実況したくなるのがアナウンサーの傾向なので皆少なからずプレッシャーを感じていた。私も細部に立ち入っていきたくなる性分であり、ダルビッシュは千載一遇の投手だったので、それならば担当するときのためにできる限り1球1球見極めていこうと取材している最中、やってのけたのがノーヒットノーランだった。

 ■小野塚康之(おのづか・やすゆき) 1957(昭和32)年5月23日、東京都生まれ。80(同55)年、学習院大からNHKに入局。以降40年間、主に高校野球、プロ野球の実況を担当し、名物アナウンサーとして活躍した。今年3月にNHKとの契約を終了しフリーに。現在もDAZN、日テレジータス、JSPORTSなどで実況家として野球中継に携わっている

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