登録名「ブラゼル」でよかった!「クレイグ」だったら…

2010.08.03

 子供の頃から、外国人選手の登録名に妙な関心があった。阪神でいうと史上最強の助っ人と呼ばれたランディ・バースはランディ・ウィリアム・バスが本名だが、本名通りバスと登録したら、もし故障に見舞われたとき、マスコミに「阪神バス故障!」などとちゃかされる懸念があり、バースを登録名にしたという。

 他にも1980年代の阪急などで活躍したブーマー・ウェルズ。彼の本名はグレゴリー・ウェルズだが、ブームを呼ぶ男という意味を込めて、ブーマーという、いわば芸名が登録名となったわけだ。

 翻って今季の阪神である。目下のところ大活躍中の大砲ブラゼルの本名はクレイグ・ブラゼルという。通常、外国人の場合、ファーストネームとセカンドネームのどちらを登録名にするかは、名前の響きなどを考慮して球団が決定する。つまり、ブラゼルは2008年の初来日時、当時の所属球団である西武がセカンドネームのほうを登録名に採用したわけだ。

 僕はこれが西武球団の知られざるファインプレーだったと思っている。もし西武がクレイグを採用していたら、阪神は彼を獲得しなかったんじゃないか。

 なぜなら、阪神にとってクレイグとは少々縁起が悪い名前だからだ。かつて96年の阪神がシーズン途中に獲得した外国人、クレイグ・ワーシントンが原因であり、彼はクレイグを登録名にすると、当時のマスコミに「打ってクレイグ」などとおもしろおかしく書き立てられた記憶だけを残して、来日1カ月ほどでいきなり故障離脱。結局、出場22試合で打率・267、本塁打3本という散々な成績に終わり、そのまま解雇されてしまった。

 ちなみに、その年クレイグとともに来日したもう1人の外国人はケビン・マースといった。当時の球団はバースに響きが似ているということで、マースのほうを登録名に採用。左打席でのオープンスタンスが特徴的だったマースは、ツボにはまればホームランとなるパワーはあったが、いかんせんめったにツボにはまらず、クレイグ同様その年限りで解雇。当時のスポーツ新聞に「打ってクレイグ、たのんマース」という遊び半分の駄洒落見出しが躍っていたことを鮮明に記憶している。

 かくしてそれ以降、僕の中でクレイグとマースは禁句となった。もし今季の阪神の外国人野手がブラゼルとマートンでなく、クレイグとマートンだったら、それだけでなんとなく嫌な予感がよぎってしまう。西武の判断に感謝である。

 ■やまだ・たかみち 作家。大阪府出身。早大卒。主な著書に「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」など。近著に「『野球バカ』は実はクレバー」がある。卓越した話術でラジオパーソナリティーやコメンテーターとしても活躍。「亀山つとむのかめ友Sports Man day」(MBSラジオ)にレギュラー出演中。様々なプロ野球関連メディアにも出演・寄稿。オフィシャルブログはblog.livedoor.jp/aoi_yamadaka

 

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