セは福島で試合してほうれん草食べる覚悟があるのか!

2011.03.24


北京五輪の壮行試合で北京を想定し照明を暗くした東京ドーム。節電ナイターは危なくて無理だ【拡大】

 プロ野球、特にセ・リーグの「3月29日開幕決定」には、耳を疑いました。開幕を4月12日まで延期し、4月いっぱいはナイターを行わないとしたパ・リーグの判断は、まだ納得できます。それに対し、セ・リーグは当初の予定通り25日とした開幕を、政府や世論だけでなく内部の選手会からも反発されたため、体裁をつくろうように4日延ばしただけ。しかも4月5日からは、多くの電力を使うナイターを開始するといいます。

 前回のこのコーナーでもいいましたが、プロ野球は、なくてもいいものなのです。娯楽であるプロ野球は、国民みんなが“得”したり、喜んだりしなければ、存在する意味がない。このまま強行開催しても得するのは、球団経営者と関連業者、それに一部のファンだけ。だから、多くの賛同を得られない。文科相や蓮舫大臣からダメだしを受けるのも当然です。

 強行開催の理由について球団は「被災地に元気や勇気を与えたい」と口をそろえています。でも、被災地は、いまだに電気、ガス、水道が通じず、死亡者の数も増え続けるばかり。開幕まであと1週間ありますが、状況はそんなに好転していないでしょう。

 茨城の大洗町で被災したボクの73歳の母親はじめ被災者は、震災に打ちひしがれ、寒さの中、生きることに必死で、テレビさえも満足に見られず、野球どころではないはず。その人たちに対し、「元気や勇気を与える」もなにもないでしょう。

 さらに関東に住む人々は、いつ終わるかわからない計画停電という不便を味わっています。被災地に比べれば…と思って、みんな我慢しているんです。福島の原子力発電所では命がけの消火活動が続いています。そんな中、一部の者の利益のため、こうこうと明かりをつけてナイターで野球をするなんて許されるわけがありません。

 「被災者を勇気づけたい」というのなら、被災した東北各地を回って試合するとか、放射線で問題になっている福島で試合をして、選手は茨城、栃木、群馬産の牛乳を飲み、ほうれん草をバリバリ食べて安全性を示す−そこまでやる覚悟があるのかと言いたい。

 それが無理だというのなら、節電が叫ばれている関東での試合をやめ、これをいい機会ととらえ、九州・沖縄、四国、山陰など日頃、プロ野球の公式戦があまり行われない地域を各球団が回って復興チャリティー試合として開催すればいい。各地方の人々も喜んでチャリティーに協力してくれるでしょう。それが全部、予定通りフランチャイズでやりたいというのだから。利益優先というのが見え見えですよ。

 プロ野球が開幕問題で揺れる中、センバツ高校野球が開幕しました。こちらも賛否両論ありますが、ボクは甲子園の開催は賛成です。なぜなら、高校野球は金もうけのためではなく、地域の期待を背負った高校球児が純粋な夢を持って戦うから。宮城の東北高はじめ、青森の光星学院高、茨城の水城高の選手らのプレーには、被災地だけでなく全国の人々が勝敗にかかわらず、大きな拍手を送るでしょう。

 セ・リーグが掲げた節電対策も疑問です。照明を落として行うという“節電ナイター”ですが、これは選手が危なくて無理。東京ドームほかドーム球場はデーゲームだとナイターより少し照明を落とすのですが、暗くて非常にボールが見にくい。西武ドームでは、ボクが球団に掛け合って日中でもナイター並みの照明にしてもらっていたくらいです。夜間、照明を落としたら暗くて、思わぬけがをしかねません。

 また延長戦なし、9回で打ち切りでは、野球がつまらなくなります。野球は延長戦があるからこそ、終盤戦の緊張感や面白みがでてくる。

 「まだ抑えピッチャーを使うのは早い」「あの代打の切り札はまだか」。監督の采配も見ものになります。今季は9回から投手起用も逆算でき、引き分けも増える。先が見えて、興味は半減することは間違いありません。

 しかもセ・パ同時開催を望む選手も中途半端な気持ちのまま開幕を迎えます。オープン戦が軒並み中止になり、無観客の練習試合ばかり。お客さんがいるのといないのとでは、選手の緊張感や仕上がりは全然違ってきます。準備が整っていない上に、選手に「本当にやっていいのか」という気持ちが少しでもあれば、最高のパフォーマンスを求めるのは難しい。野球の質が落ちることは目に見えています。

 今のプロ野球は、利益を求める一方で、お金をとって見せる野球ができないのが現状。普通に野球ができる環境、状況が整うまで、開幕を遅らせるべきです。

 ■大久保 博元(おおくぼ・ひろもと) 1967年2月1日、茨城県大洗町生まれ。水戸商高から豪打の捕手としてドラフト1位で西武入り。92年にトレードで巨人へ。「デーブ」の愛称で親しまれ、95年に引退するまで、通算303試合出場、41本塁打。2008年に打撃コーチとして西武に復帰。昨シーズン途中、雄星への暴力行為などを理由に球団から契約解除される。

 

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