WBC敗退の侍Jになかった“イチロー的倫理” 「丸井」より「イガラシ」が必要だった…

2013.03.23


会見に臨むWBC日本代表の阿部(左)と山本監督(撮影・古厩正樹)【拡大】

 【村田雅裕のスポーツ曲論】

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本は準決勝で敗退した。「ガンバレ日本」とあおっていたメディアは手のひら返しで、首脳陣や選手の醜聞、愛憎劇を暴露している。

 休日返上で練習している選手をよそに、東尾投手総合コーチが公営ギャンブルに行った。これがチームのムードを悪くしたというが、休日返上の練習を無視したことに不満を持つような選手は、プロで生きていけない。

 V逸の最大の原因は、侍ジャパンがWBC2連覇で学んだスモールベースボールを忘れてしまったこと。そして「イチローの不在」が、それを許したことだと思う。これはヤンキースのイチローが参加していないということではない。高い野球技術を持ち、常に上を目指し妥協しない。安易にムードに流されず、自分にも厳しく他人にも厳しい。そんなイチローの哲学を継承する選手がいなかったということ。「イチロー的な倫理の不在」である。

 8日の2次ラウンド台湾戦がベストゲームだった。九回2死から井端の適時打で同点。十回に中田の犠飛で決勝点を奪って勝った。選手はスモールベースボールの大事さを実感した。 だがその後に落とし穴が待っていた。オランダに16−4、10−6と大勝。2次ラウンド1組の1位通過を決め、渡米。メジャーとの練習試合では、ジャイアンツ戦は6−3。カブス戦は5−7とサヨナラ負けはしたが、点は取れた。妙な自信が過信につながった。

 一流選手だから、センター返しの打撃をするのはたやすいだろうと思うかもしれないが、一流選手だからこそ、“先祖返り”は難しい。高度の技術を身につけ、自分の打撃スタイルを持っているからだ。

 巨人の長野は社会人野球時代、「感覚でやっているので、人に説明できるような打撃理論を持っていない。だから人に教えられない」と話していた。こういうタイプの選手は「今さらセンター返し」と思うだろう。

 だがイチローがいたら、何というか。「掲げている目標を考えたら、(打線が当たってきたとか)そういう質問に答えること自体に意味がない」。こんなセリフで周囲を凍らせたと思う。

 「キャプテン」という野球マンガの古典がある。山本監督は宿舎の食堂で一杯やりながら、後ずさりする選手を捕まえ、飲みにケーションを図った。主将の阿部は他の選手が気持ちよくプレーできるように気を配った。故障を抱える選手に病院の紹介までした。日本的な「和」をつくろうとする「キャプテン」の丸井主将のタイプだ。だが必要だったのは、卓越な野球技術を持ち、下級生ながら先輩に嫌みをいうイガラシだった。阿部にはもう一歩、踏み込んでほしかった。「練習試合で打っても意味がない。原点を大事にしないと負けるぞ」。イチローだったら言葉でなくとも、そのオーラで伝える。

 確かに采配ミスもあった。好機に代打で長野が起用されるたびに、ため息が出た。スモールベースボールでは、確実に打点を稼ぐ選手が主軸に入るべきだ。適時打を期待できる選手は内川、井端、糸井の3人。この3人を続けるオーダーを1度も組まなかった。

 準決勝ではセーフティーバントの構えをする選手すらいなかった。「日本野球はスモールベースボール」。過去2回の伝統はぷつりと切れてしまうのだろうか。(運動部編集委員)

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