元宇和島東高、現済美高監督・上甲正典編(1)孫のような部員への指導法に悩む 

★元宇和島東高、現済美高監督・上甲正典編(1)

2013.06.02


上甲正典監督【拡大】

 悔し涙にくれる2年生右腕の両肩に手を置いて、上甲正典は言葉をかけた。

 「体を大事にしような。もう無理はするな」

 今春のセンバツ決勝。6回に浦和学院の集中打を浴びてベンチに戻ってきた投手の安楽智大は、上甲に「まだ投げさせてください」と訴えた。だが、試合は決定的な大差がつき、大会通算の投球数はそのとき、772を数えていた。

 最速152キロを誇る16歳に、プロのスカウトは「来年の秋まで待てない。ことしでもドラフト1位」と最大級の評価を与えている。しかし「高校野球だけが野球ではない」と、上甲は大器の将来を優先し交代指令を出した。

 1−17という思わぬ大敗を喫しての準優勝。自身3度目のセンバツ制覇は逃したが、それでも、監督・上甲正典の存在感を久々に示した春でもあった。

 2008(平成20)年の夏以来、5年ぶりに上甲が甲子園に姿を見せた。宇和島東高を率い、1988(昭和63)年春に初出場優勝を飾ったときは40歳。済美高に移り、04(同16)年春に同じ初出場Vを果たしたときが55歳だった。そして今春は65歳。気がつけば監督歴は31年を数え、大ベテランの域に達している。

 頭髪には白いものが目立つ。声も、聞き取りにくいほど小さい。指導方法も大きく変わった。

 “上甲スマイル”と呼ばれた笑顔の裏に、「鬼」と呼ばれたほどの実像があったことは後述する。宇和島東高での平井正史(現オリックス)、宮出隆自(現ヤクルト・コーチ)、岩村明憲(現ヤクルト)。済美高での鵜久森淳志(現日本ハム)、福井優也(現広島)…。のちにプロ野球に進む選手たちの時代には、今では大問題になる“鉄拳指導”もいとわなかった。

 今は違う。たとえば安楽の育成は「難しい」と顔をしかめる。

 「けがをさせたら終わりだから、追い込みにくい。あんな素材は今までにいなかったから…」

 練習での投球数やトレーニングメニューは、全て本人に任せる。加えて、安楽以外の選手の気持ちにも気を使う。

 「本当は安楽に4番を打たせてもいいけど、先輩の3年生たちにもプライドがある。チームワークが大事だから」

 監督の権力で抑えつければよかった時代は終わった。選手の気質も変わり、孫のような部員への指導法に悩む姿がある。

 春の4勝を加え、甲子園勝利数は24になった。四国地区では馬淵史郎(明徳義塾高)、蔦文也(池田高)、谷脇一夫(高知商)に次ぐ4位。名将の1人になった監督・上甲正典の31年とは…。 =敬称略

 ■じょうこう・まさのり 1947年6月24日、愛媛県三間町(現宇和島市)生まれ、65歳。宇和島東高では三塁手でプレーしたが甲子園出場歴なし。龍谷大もレギュラーにはなれず、リーグ戦出場は8試合にとどまった。卒業後は宇和島市の製薬会社勤務などを経て独立し、75年に上甲薬局を開店。同年に宇和島東高のコーチとなり、その後監督に就任した。87年夏に甲子園初出場、翌88年のセンバツは初出場初優勝。2001年に同校を退任し、翌年から済美高の監督となり、創部2年目の04年にセンバツ初出場初優勝した。甲子園成績は宇和島東高で10勝10敗、優勝1度。済美高は14勝3敗、優勝1度、準優勝1度。

 

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