6日の巨人戦(東京ドーム)を2−1の接戦で制した横浜DeNA。この試合こそヒット無しに終わったものの、チームで数少ない希望の星となっているのが、筒香嘉智選手(22)。
和製大砲として期待されながら、なかなか芽が出ず、昨季も中盤以降、中畑構想から外れていましたが、今年は開幕から不動の5番打者として定着。7日現在、打率・287という成績を残しています。
その急成長を後押ししたのが大村巌2軍監督(44)。昨秋の奄美大島キャンプのメンバーから外れた筒香選手は、横須賀での練習となりましたが、残留選手が少なかったこともあり、自然と打撃コーチから昇格した2軍監督とのマンツーマントレーニングが行われるようになったのです。
大村監督の指導はいたってシンプル、かつ一貫していました。技術的には「軸足がふらつく所があったので、エッジを利かせるように軸回転で打つ」。意識としては「毎打席、試合に貢献する打撃をする。できれば毎試合打点をあげられるように」という2点。
筒香選手は言います。「昨年までの僕は周囲の期待もあり、ホームランを求めすぎていました。それが、打点を意識するということなら、ランナー三塁のときは反対方向にヒットを打てばいいんだなと…」
ちなみに今年の彼は出場28試合で18打点ですから、80打点超ペース。また4月は2日から8日にかけての5試合で、ヒットが1本しか出ないことがありましたが、このときも「原点を忘れずに自分のやり方を変えずにやりました」と。
ちなみに大村監督は、日本ハムの打撃コーチ時代には糸井嘉男選手(現オリックス)を育てあげています。「当時、彼に言ったことは集約すれば2つ。『努力した者が勝つ』と『困ったら重心を低くして反対方向に打て』でした」
指導者としてのモットー、筒香選手へのメッセージもうかがいました。「教える者は絶対にブレないこと。ブレたら選手が迷ってしまいます。筒香には自分のやってきたことを変えない自信を持ち続けてほしい。変えて人のせいにするのはよくありませんから」
ロッテでの現役時代に多くのコーチから指導を受け、自分のフォームを固められず結果を残せないまま引退した彼が、名伯楽の道を進みつつあることにプロ野球の奥深さを感じます。
まだシーズンは前半ですが、筒香選手の今後に注目です。
■松本秀夫(まつもと・ひでお) 1961年7月22日生まれ、東京都出身。早大卒、85年ニッポン放送入社。スポーツ部アナウンサーとして「ショウアップナイター」の実況などを担当。2005年ロッテ優勝決定の試合での号泣実況のほか、数々の名言がある。